35 / 115

第35話

だらだらとマイナス思考でお酒を飲んでいたら朝になっていた。 テーブルに突っ伏して寝落ちしていた体は軋んでいて動くのが地味に辛い。 「もう昼だぁ」 心が狭いのはわかってるけど…でも先輩のこととなると自制がきかない。 どうせ何も手に付かないんだから…布団で1日過ごすことにしよう…。 先輩の事を考えながら ただ惰眠を貪った。 食事を取る気力もない。 夢と現を行ったり来たり、先輩との思い出を記憶の底から引っ張った。 初めて会ったのは高校に入学してすぐの頃。 物理の教科担任に何かを持って行くように言われて1号棟に行った日だった。 2号棟と3号棟は建屋が真っ直ぐに近い形をしているのに1号棟は廊下がささくれているようにも見える かなり分かりにくい建物なのだ。 このささくれている廊下のせいで、同じ廊下を通っても行きと帰りの景色が全く違って見える。 ぼーっとしながら通った僕は迷子になりかけ、ちょっとパニックになっていたところに…先輩が声を掛けてくれて…ん? 最初は誰かと間違えて声を掛けてきたんだ。 『しまの、こんな所で何してるんだ?』 『しまの』…しまの…。…もしかして僕の前世の名前…? あれ?先輩分かってたのかな? 僕が“しまの”だったって。 他人にも自分にも興味をほとんど示さない先輩が見知らぬ後輩に声を掛けてくるなんてあり得ない。 あの時は先輩のことを知らなかったから『親切な人』位の認識だったけど…先輩の性格がわかる今なら、あの行動は普通じゃないと断言できる。 先輩は僕を見つけてくれたんだ! 急に身体中が熱くなった。 顔も真っ赤になってるに違いない。 どうしよう、嬉しい、嬉しすぎる。 僕は先輩のことが大好きだけれど、先輩も僕のこと…好きなはず…多分。 そうじゃなきゃ一緒に泊まって、あ…あんなことしたり出来ない。 うん、大丈夫。 …先輩は僕のこと、好き…。 気持ちに整理がついたのでもぞもぞ起き出してシャワーを浴びた。 うぅ、二日酔いかな?頭痛がする。 パンツを履き 濡れた頭をバスタオルで拭きながらベッドに転がった。 テレビでも見ようとリモコンを取ろうとしてぱたりと手がシーツの上に落ちる。 …あれ…? …眠い… あんなに寝たのに…瞼が重い…。

ともだちにシェアしよう!