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第39話
週末は先輩の部屋に通う。
もちろん先輩は忙しい人だから毎週って訳にはいかない…。
今週の金曜日は予定があるっていうし…
…結局OKが出なかった。
僕の知らない人が先輩と二人きりで会うなんて…モヤモヤする~!
あの先輩が個人的に会うんだから好意的なんだろうな。
好き…?
いやいや僕という者がありながら…まさか…ね?
「百面相?自販機好きなの?」
おっと、缶コーヒー買いにきたんだった。
自販機相手に語ってた。
「何でもないよ」
小銭を投入してボタンを押した。
薫はふうん、といいながらも僕を見る。
「志摩ちゃん、たまには一緒に晩ご飯たべようよ」
え~やだなぁ。
「今、やだなぁとか思ったでしょ。酷い」
「なんでわk……じゃなくて、面倒」
「いいお店見つけたから行こうよ」
でもなぁ…。
「和牛の店なんだけど、チケットゲットしたから安く食べられるよ」
「和牛…」
食べたい…お肉…。
先輩はあっさりしたものが好きだから、最近食べてないなぁ。
「う~ん、どうしよう」
「チケットの期限が金曜日までだからそれまでに決めといて」
金曜日~!!
「…考えておく」
いい返事待ってる、と言い残して薫はエレベーターホールに消えていった。
金曜日…先輩と会う予定はないし…和牛かぁ…。
キーボードを叩く指が止まる。
和牛…わぎゅうぅぅぅぅ。
薫は寝込みは襲わないって言ってたし。
僕の方が上背あるし、ウエイトあるし。
薫とご飯食べる位、問題ない…よね。
先輩と一緒には過ごせないけど、美味しいお肉で気持ちをリフレッシュさせてもいいよね。
「薫」
隣でPCに向かう薫を呼ぶ。
「金曜、肉食べに行こう」
「そうこなくっちゃ」
薫の口角が片側だけ上がった。
「う、旨いぃぃぃぃ!」
いいお肉は脂身が甘いという…。
ピンク色で艶があるお肉を目の前でステーキに焼いてもらう…。
匂いだけでご飯がお代わり出来そう。
ナイフで一口大に切り分けるが、そのままかぶりついても難なく噛み切れそうな程柔らかい。
咀嚼する口の中が涎で一杯になる。
「志摩ちゃん、美味しそうに食べるね」
半ば呆れ顔で薫が言う。
「こんなに美味しいお肉食べたの初めてだよ!」
目の前のシェフにクスリと笑われた。
「喜んでもらえて良かったよ」
んんんんんまい!
大切に食べたいのにパクパク食べちゃう~!
デザートのバニラアイスはあっさりとしてさらっと喉を通っていく。
「あー食べた、お腹いっぱい」
先輩に会えない寂しさを紛らわすのに十分だ。
支払いを終えて美瀬を出た。
「志摩ちゃん、美味しかったね。」
「薫、ありがとう」
いいやつだったんだな。
「このまま帰るのまだ早くない?ちょっとだけ飲んでいこうよ」
んー、どうしよう。
前のアレがあるから~、うーん…。
ま、ちょっとならいいか!
美味しいお店教えてもらったし。
「じゃあ一杯だけ…」
薫と夜の町にくりだした。
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