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SS-1-1『気になるあの人』
終業のチャイムが鳴ってから三階へと向かった。
急いでいる訳ではないけれど…足早に階段を下る。
今日は金曜~今日は金曜~ん・ふ・ふ!
「せんぱ…ぐっ!」
開ききらない扉が体に当たる。
「志摩ちゃん、毎度ぶつかるの止めて。扉が壊れるよ」
「…田中さん、お疲れ様です」
自動扉め…センサーの反応が鈍い!
「柴田は来客中。あ、器具の洗浄ヨロシク」
仕事を言いつけられてしまった…洗うか…。
マスク、感染防止眼鏡、白衣、手袋を着用して洗い物。
…嫌じゃないから、ま、いっか!
これは…今日はキャピラリーやったんだ。
いいな~。
電気泳動…好き。
「志摩、何し…」
「ひゃあ!」
びくっ!と大袈裟に驚いてしまった。
あ、先輩が引いてる…。
見てわかるでしょ?
「田中さんがやれって」
「志摩ちゃん、暇だって言うから」
「言ってない、言ってない」
ありがとう、と囁くように言って先輩は田中さんと何やら話している。
「終わりましたけど」
「ありがと、志摩ちゃん」
「何の話です?」
二人揃って僕を見た。
「知らないの?」
知らないよ、田中さん。
「源雅貴センセイが来てるんだよ」
「ええっ!」
「あれ?志摩ちゃん、源センセイ知ってんの?」
…ま、ざっくりと…。
「お…お名前だけ…」
「……」
「じゃ、志摩ちゃんもおいで、懇親会するから」
チラッ、先輩は…うん、反応無し。
「は…はい、お供します」
……で、やって来ました懇親会と言う名の飲み会…。
大人ってお酒好きだよね~。
まぁ、僕も嫌いじゃない。
さすがに会場は居酒屋なんかではなく…オシャレなイタ飯屋さんだった。
そして…軽~く針のムシロ…。
僕と先輩の間に源センセイがいらっしゃる。
何でやねん!
「事代堂くん、っていったっけ…」
視線だけ僕にくれている。
やだぁ…怖い…
「ハ…ハイ…何でしょうか」
「君ねぇ…真幸の…何?」
何って…恋人…って言ってもいいのかな?ドキドキ…。
イヤ駄目だろ~な…と考えていたら
「後輩ですよ」
と先輩がさらっと答えた。
ソーデス正解デス。
「ふ~ん…本当に?」
もう!僕に聞かないでよ!
「まぁ、そんな…」
後輩じゃなくて愛し合ってるんです!
って胸の中で叫んだ。
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