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SS-1-3『気になるあの人』

タクシーを降り、先輩の部屋へ。 「志摩、飲む?」 ネクタイの結び目に指を掛けた先輩に、視線を向けられた。 ベッドのすぐ下から見上げると缶ビールの底が目の前でぶらぶらしていた。 「少しだけ」 缶ビールを手渡されフタを開けた。 プシュッという音がしてビールの飛沫が散る。 ごっごっごっ…ぷはーっ。 「いい飲みっぷり」 「旨いです」 喉が渇いてたのか。 自分では気づかなかった。 「覚悟したほどは絡まれませんでした」 「ん?源センセイ?」 ベッドに腰掛けて先輩もビールを飲んでいる。 「社会的に抹殺される位叩かれるのかと…」 あはは、と珍しく先輩が声をあげて笑った。 「そんなに危ない人に大事な志摩を会わせないよ」 にこっと笑顔を向けられて…照れる…。 大事にされてるんだ、僕…。 「先輩…キス…していい?」 立ち上がり頬を手でなぞる。 「ん…」 すりすりと僕の手に顔を寄せる…むっは~可愛いよ~。 抱き締めてちゅーして…もっとあれやこれやしたい! チュッと一つだけキスをした。 「あ…あの僕…ダッシュでシャワー浴びてきます!」 今日の飲み会で脂汗いっぱい出ちゃったから自分でもわかるくらい臭い。 ぱぱっとスーツを脱いでバスルームに飛び込んだ。 勝手知ったる先輩の家のバスルーム…。 わしゃわしゃ頭の天辺から爪先まで洗い…完璧! えっと…タオルは…カゴの中に…ん?何だコレ? カゴの向こう側、淡い色合いの中に不釣り合いな黒色…。 「志摩出た?俺もシャワー…あ!」 僕が掴んだらコレを見て、先輩が短く声をあげた。 「な…んで…志摩…どこから…?」 「先輩…こんな破廉恥なモノ…」 両手でピンと伸ばして見せる。 真っ赤になってあわあわしてる先輩。 黒色のビキニパンツ…。 これは、修漣さんがこの部屋に居た時に先輩が穿いてた。 「僕に内緒でこんなけしからんパンツを穿いてたんですか?」 「…」 「ちゃんと見れてないから…じっくり見たいな~」 先輩の体を包み込むように抱き、耳元で囁いた。 「…いや…」 「そんなこと言わないで…」 首筋に口付け、髪をまぜるように撫でる。 「…ふっ…んっ…」 「ね…いいでしょ?見せて?」 「…ちょっとだけ…」 「…うん、ありがと」 一緒にバスルームに入り僕が恥ずかしがる先輩をさっと洗ってバスタオルを被り、早めにベッドに戻った。 バスルームに長居するとパンツの存在を忘れてしまいそう…。 憧れのお風呂プレイはそのうちに…。 「僕、向こうを向いてますから準備が出来たら教えて下さい」 ウキウキ、バスタオルの下で心が跳ねる。

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