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SS-1-8『気になるあの人』

出勤すると、そこに源先生がいた…。 何故ここに…先輩のいる三階と間違ってませんか? 業務上いろいろお世話になっているから、いらした、と、言った方がいいのか…。 「百面相している、君」 「事代堂です、源先生」 「あぁ、事くん」 よくある事だけどね、名字省略されちゃったよ。 「少し付き合ってもらえるかな」 柿崎さんに助けてビームを出してみたが、思った通りにスルー。 課長は…視線すら合わせる気がないらしい…。 「…わかりました。課長、打ち合わせスペースに行ってきます」 誰か、引き留めてよ…。 同じ階にある打ち合わせスペースはフロアの半分を占め、軽食を取りながらでも利用出来るようになっている。 サーバーでコーヒーをを二つ淹れ、一番奥のテーブルに陣取った。 就業時間に入っているので他には誰の姿も無く、気兼ね無く話せる。 「どういったお話でしょうか」 源先生はコーヒーのカップを口に運び一息置いてから口を開いた。 「君は真幸を幸せに出来るのか?」 え?それ聞いてきます? 「勿論です」 「随分と自信があるんだね」 先生の目は真剣だった。 じっと見据えられ氷の矢で射ぬかれるような…そんな視線。 「ずっと…ずっとユキさんだけを想ってきました」 先生はまだ黙って聞いている。 「過去にあったことも全て思い出しました。でも僕はユキさんと生きて行きたい」 ふーっと大きく息を吐いて先生が口を開く。 「また、邪魔するかもよ?」 くっ…この期に及んでも…。 「それでも僕は…ユキを愛しているんです。止められません」 「はあ、バカらしい。安心しろ、何もしないから」 「え?」 「真幸にも釘を刺されてるし」 あ~学会の時。 「あの…ビキニパンツ…」 「あれは棗を煽る為に使った」 煽る…!僕までもその効果はありましたけどね! 「あの…ユキを愛しているんですか?」 「少なくとも昔は…そうだったと思っている。だが今は違う。幸せを願うだけだ」 優しく微笑む顔は弟を想う兄に見えた。 ああ、今この人は家族愛でユキさんの幸せを願ってる、そう感じた。

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