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SS-2-3『聖夜』

階段を駆け降りて先輩のもとへ。 ついてる!今日は自動扉にギリギリ当たらずに入れた! 「データは明後日までなんですよね!」 先輩に向けて叫んだつもりだったのに…ととと、先輩の姿は見えず、田中さんがいた。 「志摩ちゃん、待ってたよ。柴田は奥にいるから声をかけてあげて」 はーい、と返事をして白衣に袖を通し前処理室のドアを開けた。 「先輩、何から手をつければいいですか?」 「志摩!分注は終わってるからA試薬入れて」 マスクとディスポの手袋を装着してラックに並んだチューブに試薬を分ける。 「350用意すればいいですか?」 「正常値が多いだろうから325でいい」 「了解です」 ピペットで吸って、吐き出して、混ぜて…。 先輩は鮮やかな手技で次々と処理を進めていく…。 測定機器に試料をいれたらデータが出るのは今や当たり前なんだけど、前処理が必要な繊細な測定方もまだまだたくさんある。 「こういった職人芸って廃れていくんでしょうね…」 「志摩!口より手を動かせ!」 「ひゃっ、はいっ!」 …仕事中は鬼だよね…先輩って…。 それから黙々と作業を進め、気がつけば日付が変わろうとしていた…。 「先輩、再測定ありますか?」 パソコンでデータチェックしている先輩、カッコいい! 「…ん~、19…22やっとくかな。シングル19とダブルが3」 「おぉ!試薬ぴったり!」 パチパチ…ヤバい、テンションがおかしくなってきた。 「そんなのいらないから、アッセイ始めろ」 はーい、って返事して作業を再開すると前処理室のドアが開いた。 「おい、柴田データ」 あ、田中さん。 「これです。22再測で3トリプル処理します」 「じゃ、これ見てから仮眠取るから柴田と志摩も交代で休めよ」 「わかりました」 え~と、次は…A試薬添加して反応が… 「志摩、反応させたら仮眠取ってこい」 「まだ大丈夫ですよ?」 「…行ってこい」 あらら、これは逆らったらいけないヤツ…。 「…これ添加したら行きます…」 言うこと聞かないとめっちゃ機嫌悪くなる…。 てきぱきと(当社比)作業を進めて…いざ、休憩。 「それじゃお先に…反応終わる頃に呼んで下さいね」 田中さんはきっと宿直室だろうから… 「休憩室にいますね」 振り向かない先輩に一応声を掛けて部屋を出た。

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