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SS-2-6『聖夜』

抱き締めていた温もりが消えてしまったような気がして目を開けた。 暗い部屋。 ベッドには僕一人。 …先輩…トイレかな…それとも…。 それ以上考えることが出来ず、すうっと意識が闇に落ちて…また…眠った。 「…ん…」 もぞもぞと動けば柔らかな体温を捕らえた。 「…っん…せん…ぱい…?」 目が合う。 先輩、起きてたんだぁ…。 ぎゅっと抱き寄せて温もりを堪能する。 …シャンプーの香りがする…。 「先輩…いい匂い…」 すんすんと先輩の纏う空気を胸いっぱい吸い込んで頬擦りした。 「志摩…」 先輩が僕の腕を解き、僕の頭を引き寄せる。 ちゅっ…先輩からのキス。 「先輩からのキス、嬉しいです」 僕を見つめる先輩に、ふははと笑ってみせた。 「志摩…俺は…志摩が好きだ」 先輩は僕と目を一瞬だけ合わせてそう言った。 「僕も先輩、ユキさんが大好きです」 「ずっと好きでいてくれる…かな…?」 な…何てことを聞いてくるんだ! 僕は起き出してユキさんの目の前で正座をした。 つられてユキさんも体を起こす。 「一生愛する自信があります!むしろ自信しかない!!です!」 ユキさんの顔は今まで見たことがないくらい赤くて震える手で箱から何かを取り出した。 「志摩…手…」 右手を差し出す。 「逆」 おっと違ったか! 左手の手のひらを差し出す。 ふうっ、とユキさんがでっかいため息を落としたのが視界に入った…また間違えた? ユキさんが僕の手の甲を上にして指に…光るモノをはめた…。 「ユキ…これって…!」 「…志摩が嫌でなければ…受け取って…ほしい」 「ユキ…!」 もう、あばら骨がギシギシいうんじゃないかって位にユキを抱き締めた。 「志摩…苦しい」 嬉しい嬉しい嬉しい…涙が溢れる…。 「…ユキ…ありがとう…」 ユキは子供をあやすように僕の背中を撫でてくれた。 「…それで…俺に…コレ…」 ユキの手のひらにもうひとつの指輪。 「…うん、ユキ…手を出して」 さすがに手のひらを上に…は、しないですんなりと指にはめられた。 「志摩、ありがとう」 「ユキ、嬉しい…」 ユキの頬にも雫が光っていた。

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