65 / 115
SS-2-11『聖夜』
「志摩、誕生日おめでとう」
「はい、ありがとうございます」
帰り道、スーパーでチキンレッグ、サラダ、ショートケーキを買ってユキさんのマンションに帰って来た。
「もう誕生日にケーキを食べる年でもないんですけど…」
フォークでクリームを掬う。
「…でも、嬉しいです」
口の中に入れると甘さがふわっと広がる。
「僕、一人っ子なんでイチゴのケーキって年一回しか食べられなかったんです。兄弟がいればあと何回か食べられたでしょうけど」
「…そう?」
「クリスマスと誕生日は一緒にされちゃうし、父親は単身赴任が多いし、母親も仕事が忙しい人だったし…そもそも家でケーキとか…クリスマス位でした」
それも母と二人…。
あれ?結構寂しい子供時代?
「今は俺がいるだろ」
「はい、ユキさんが一緒に居てくれて嬉しい…」
あ…涙が…ずずっ…。
「そうだネックレス!つけましょうよ」
手のひらで涙を拭った。
ユキさんが箱から取り出して…僕が首に着ける。
「出来た!」
ユキさん色白でこの繊細なデザインがよく似合う!!
「…ん、ありがとう…」
白く輝くチェーンを指でなぞる。
ユキさんの表情がふっと優しく緩んで、僕は、あぁやっぱりこの人が好きだな、と思った。
ともだちにシェアしよう!