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SS-2-12『聖夜』
年末まであと少し。
昼までに終わらせなければならない仕事を片付け、午後からは大掃除。
気合いが入る僕の左手に輝くのは、シルバーの輝きを放つ指輪。
顔がにやける…。
お掃除頑張ろう!
周りをよく見ると柿崎さんの机回り…汚い。
うっわ…ナニコレ…。
書類と埃のコラボ…。
ダメ、見ちゃ、絶対!
手伝わされるから…。
自分の机の中を綺麗に掃除して…足りない文具を補充。
ラインマーカーもかすれてきてるな…中身だけ詰め替えて…。
よし!
「机回りのお掃除終わったので三階手伝ってきます!」
篠崎課長にそう告げれば
「今日は粗大ゴミの収集があるから気をつけて行っておいで」
と快く送り出された。
心も体も軽やかに階段を下る。
「せんぱ~いっ…った!」
そして今日も自動ドアが僕の行く手を阻む。
「志摩ちゃん、年末に労災?」
ケガしないでね、と田中さんに笑われたが先輩の姿はない。
「あれ?先輩は…?」
「今ね産廃出しに行ったけど、すぐに戻って来るよ」
にこやかに言ってくれるけど…重いし種類が多いから大変なのに…。
「様子を見てきますね」
階段をかけ降り外へ出て、建屋の裏手へまわった。
可燃物置き場のドアは大型トラックの影で見えないが、その奥の廃液置き場のドアが開いているのが見える。
点々と並ぶ三角コーンの向こう側に台車を押す小柄な人影。
「先輩発見!」
あわわ、重そうにポリタンクを運んでる。
俺は手伝おうと構内を駆け出した…三角コーンを無視して。
本当ならコーンの外側を通らなければならないのだが…ショートカットの如く内側を突っ切って、あとちょっと…声をかけようと息を吸って…
焼けるような痛みと衝撃
世界が…真っ暗になった…
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