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SS-2-14『聖夜』
「…許さない…」
あぁ、先輩がご立腹です…。
「こんなケガしやがって!」
包帯の上からデコピンをキメる先輩…レア…。
病院の布団を捲ったら萌えが飛び出しそう…。
「年末最後の出勤日に労災してんじゃねぇ!」
「…スミマセン…」
新しい年を迎えた今日、僕は病院のベッドで先輩に介護…違うな…お世話してもらってます…。
「大型機器の排出があるってアナウンスあっただろ?」
「…はい」
「しかも、志摩が部屋を出る時に篠崎課長からも言われてたって」
「…はい…」
僕がショートカットした三角コーンの内側は廃棄予定の大型機器を一時的に溜めておく場所で、気づかなかったけれどその時クレーンで作業中だった。
機器を吊り上げたロープがバランスを失った所に僕がコーンを突っ切ってはいっちゃったから…上から落ちてきた外れた部品が体に当たって地面に強か体を打ち付けた…。
誘導員もいたんだけど…バランスを崩した方に気を取られてそっちに行ってしまった。
「しかも…あの機械、廃棄手続きしたの…志摩だって?」
ドキッ…!
「外れる部品は予め取り除くか外れないように養生しておく事になってただろ?」
…仰る通りです…。
「機械の中に洗浄用の液体まで残ってたっていうし」
…はい、それ、腕にかかりました…
「…心配させるな…!」
「…ごめんなさい!」
口をへの字に曲げて泣くのを我慢している先輩を引き寄せて唇を親指で撫でた。
「…キ…キスはしないから…」
「え~…」
「ここ!病院!」
真っ赤になってあっちを向く先輩…可愛い。
「反省してます…」
僕は愁傷にそんな言葉を口にした。
何かね、浮かれてたんだと思う。
だからといって仕事を疎かにしちゃ駄目なんだけど。
僕は心から反省した。
頭を打ったせいで入院したが、幸いケガ事態はそんなに重症ではなかった。
頭の他は右手と腰の打撲、左腕は洗浄液がかかって軽い火傷のようになっている。
退院が決まって手続きをしていると先輩が不意に僕の肩を引いた。
「志摩、ウチに来い」
…!
「…その…生活が…不便だろ?」
男らしい顔からの…デレ…?
カッコ良くて可愛いい…。
「いいんですか!?」
「いいから言ってる」
先輩の視線は宙を泳いだ後僕の左手に光る指輪を見ていた。
「先に志摩の部屋に荷物取りに行くか?」
「入院に持ってきたもので暫くは過ごせるので大丈夫ですよ」
「…違う…」
あれ?先輩怒ってる…?
先輩は僕の手をぎゅっと握った。
「俺と暮らそうって…言ってる」
…マジ?夢じゃないの?
僕はにやける頬をつねってみた。
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