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SS-2-15『聖夜』
し・ん・こ・ん!(新婚)
大きな声で叫びたい!のを、ぐっと堪えて引っ越し作業!
先輩はもともとファミリータイプに住んでいるので部屋数にはゆとりがあって、書斎に使っている部屋の隣が僕の部屋になる。
アパートに置いてあったパソコン以外の家電は処分し、机、本棚とベッドを持ってきた。
ベッドは処分しようと思ってたのに『ケンカしたら寝るとこないだろ?』と言われて泣く泣く持ち込んだ。
ケンカなんてしないもん!絶対!
服も本もそれほど持っていないので引っ越しは半日で終わり、午後は片付け。
「志摩、つかれただろ?休憩しよう」
午後三時、片付けも一段落して一服するのにはちょうどいい。
コーヒーの香りが漂うリビングでユキさんとお茶をする。
「コーヒー、すっっごくいい香りがする」
口に含んでみると鼻に抜ける香りが堪らない。
「あ~美味しい」
「志摩、チョコ好きだろ?」
こ…これは…!
ヨーロッパのどこかの王室御用達だか何だかの…。
「好き!ユキさん、ありがとう!」
一つ摘まんで口の中へ…。
体温で溶け甘く苦い複雑な味が鼻腔を擽る。
「ん~しあわせぇ…」
好きな人と暮らす穏やかな時間。
目の前には静かに微笑む愛する人…。
「こんなに幸せになっちゃって…いいんでしょうか…」
修漣さん、腥漣さんの事が頭を過る。
「いいだろ」
そっけなく答えるユキさん。
「あいつらだって…そうなるよ」
…?
どういう意味?
「志摩、今日からどこで寝る?」
…は?
「どこで…って…」
まさか…!自分の部屋で、一人で寝ろってこと!?
「そんな顔しなくていいよ」
ユキさんが苦笑い…。
「もちろんユキさんのベッドで…」
「…うん、わかった」
嬉しそう…良かった。
「じゃあ早速、寝心地を確かめに行きましょう!!」
「え…?何を言って…志摩!」
ユキさんを抱き上げて、バタつく足に叩かれながら寝室に連れ込む。
ベッドに押し倒して指を絡めた。
「志摩…もう何度も寝てるだろ?」
妖艶に微笑むユキさんの口をキスで塞いだ。
「ん…しま…」
ちゅっちゅっ…。
何度も何度もキスをする。
「ユキ…いい…?」
見つめ合う。
「ダメ…」
…!しゅん…。
「…じゃ…ない…」
上目遣い~!
「ユキ…」
僕が…あなたを…
「全力で愛するから…」
覚悟して…そう耳元で囁くとユキは
「…俺だって…」
と僕の首に腕を回してきた。
まだ明るい日差しの中
シーツの波に飲み込まれながら
永遠に向かって僕らは泳ぎ出した…。
聖夜 ー了ー
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