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SS-4-1『温泉に行こう』
「だからね、泊まりで温泉」
「はい?」
四月がそろそろ終わろうとしているこの朝、先輩こと柴田真幸が朝食のトーストを僕から受け取るタイミングで唐突にそう言った。
「そろそろゴールデンウィークでしょ?混んでますよ?予約もどうかな。あ、今日のベーコンチーズ美味しく出来てる」
僕はコーヒーを飲みつつトーストを齧った。
「志摩は行きたいの?行きたくないの?」
先輩にじっっと見つめられて僕は本心を口にした。
「もちろん…行きたいですよ?」
僕がそう言うと先輩は子供のように笑顔を炸裂させた。
「よし!行こう!!」
「は?そんな急に…」
「行けるんだよ…ふふ」
先輩がなんだかとてもはしゃいでいて、そんな先輩を久しぶりに見たせいか僕もつられて嬉しくなった。
「いつ行きます?休み取れるかな」
ダイニングテーブルを回り込み、背中から先輩をギュッと抱いた。
「ン…志摩…コーヒー溢す…」
先輩があわあわしてる。
「温泉、楽しみですね」
先輩と温泉かぁ、しかも御宿泊!
露天風呂に入ったり、豪華な食事を食べたり…そ・し・て、浴衣で…!!!
すでに僕の頭の中は煩悩と妄想で溢れ返っていた。
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