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SS-4-12『温泉に行こう』
「受け付けしてくるからあの辺で待ってて」
先輩が指さす先はいわゆるロビー。
年代物の天鵞絨(びろうど)張りと思われるソファーがででん、と並んでいた。
「おぉう…豪華…」
腰を安定させる作りになっているようで座り心地は最高だ。
「…いい…凄くいい…」
リラックスしてあくびを噛み殺すと少し離れた所にいるちょっと年上の女性と目が合った。
…あぁ、恥ずかしい…。
すぐに視線を逸らし、身を小さくした。
体は小さくはならないから気持ちだけね!
あれ?まだ見られてる?
僕を見てニコニコしてるけど…誰かと間違えてるのかな…。
後ろを振り返っても特に宿泊客と思われる人はいない…。
だが振り返った拍子に視界に入った先輩は手続きを終えて荷物を持つ所だった。
…今だ!
僕は恥ずかしさもあって一目散に先輩の元へと走った。
「志摩、こっち」
仲居さんに案内された客室は普段旅行に出かけない僕が見ても、豪華すぎる部屋だった。
いや、部屋じゃないよ、戸建てだよ。
小さな家のような造りで専用露天風呂もある。
おぉぅ…先輩と温泉でしっぽり…。
湯上がりに浴衣で涼む先輩…♡
僕の妄想が膨らんでいく。
「荷物置いたら飯にしよう」
…おっと危ない…。
先輩に声を掛けられ僕の不埒な妄想は中断した。
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