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SS-4-14『温泉に行こう』

少し開いた障子から入り込む日差しが座椅子にあたり、伸びているその影で日が傾いているのを知った。 空は赤と青が所々斑になった色合いになっている。 ぼんやりと小さな空をみていたら背中からすうすうと寝息が聞こえる。 「先輩?」 先輩は僕に寄り添うように体をくっ付けて穏やかな寝息をたてていた。 「かーわい」 透き通るような肌に睫毛が影を落とす。 「…僕はここに居てもいいんでしょうか…」 先輩の黒髪をさらりと梳き、唇を寄せた。 「…ん…志摩?」 「はい」 腕の中で目覚めて一番にボクの名を呼ぶ。 体を起こし、僕の腕を取って… 「ぎゃっ!」 「あ…痺れてんじゃ…ほら!」 先輩が寝ている間にしていた腕枕で血流の止まった腕をぎゅうぎゅう押された。 「ひ…ひどい…」 思わず涙目…。 「あ、もうこんな時間。志摩、出るぞ」 「え?どこに?」 「晩飯食うだろ?」 「はい」 …もちろん食べますよ。 食べるけど、なぜか置いてきぼり感が否めない。 ぱぱっと衣服を手で払って先輩と部屋を出た。 夕食は襖で仕切られた宴会場だった。 テーブルに料理が三人分並べられて… …三人… …多くないか? それとも僕のお代わり分とか。 一体誰と食事をするのだろう。 先輩は何も言わないまま席に着いている。 隣に座り、先輩の目の前の空席に心が乱された。

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