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SS-4-16『温泉に行こう』

「まあ、美味しそう!事代堂くん、食べましょ!まーくんも」 語尾にハートマークが付いたような言い方がとても可愛らしく楽しそうにはしゃぐ姿はにわかに先輩の母親とは信じ難い。 高校時代から先輩を見てきたとはいえプライベートに関して先輩は多くを語らない。 出会った高校生の頃、先輩はすでに一人で暮らしていた。 ご両親は先輩一人を日本に残して当時からずっと海外の研究施設で勤務している。 その母親が今、僕の目の前に。 「恥ずかしいからそんなに見つめないで」 「す…すみませんっ」 つい、じいっと見入ってしまった。 「まーくんとは一緒に暮らしてるんでしょ?」 ドキーン!! ギ、ギ、ギ…と油切れのロボットのような動きで先輩の顔を見るが… あ、知らん顔…。 「は…はい」 引き攣る顔で無理に笑顔を作った。 「まーくん、こう見えて独占欲強いから大変ね」 …お母さん、それはどういう意味でしょう? 食事になかなか手を付けられず、カラカラの喉に一気にジュースを流し込んだ。 「志摩、聞かなくていい」 「まーくん、照れてるみた〜い。い〜な〜こんなにカワイイ彼がいて」 「ぶーっ」 「志摩、ほら手拭き」 「あ…ありがとう…じゃなくて!あの、先輩はどこまで…その…僕の事をお母さんに話してあるんでしょ…う?」 先輩に問いかける僕を二人が同じ表情で見ていた。

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