「「全部！」」 同じ表情で、同じ言葉をセレクトするとは… …親子だ…。 「まーくん、事代堂くん連れてこっちに来ればいいのに」 「…え?!」 大きな声が出て、二人の視線が刺さる。 「行く訳ないだろ」 …やっぱり、先輩はアメリカに行っちゃうのか… 「州によっては結婚できるのに？」 …結婚… 女の子じゃないからそこまで固執はしないけど… もちろん出来たら嬉しい、と思う。 「…その話はもういいだろ」 「ハイハイ。あ、コレ美味し〜！」 それからは何となく二人の話に相槌を打ち、へらへらと愛想笑いをして食事を終えた。 「パパは明日こっちに着くから、また明日ね」 また、明日…？ 「はい、ありがとうございました」 お礼を言いつつも気になるフレーズに首を捻る。 「もう邪魔しないでくれよ」 つっけんどんに返す先輩。 「もちろん。ほどほどにね」 親指を立て、去っていくお母さん…。 「えと…可愛らしい方ですね」 「…見かけはな」 お母さんと別れ先輩と二人。 先輩は普段よりゆっくりと歩く。 建物同士を繋ぐ渡り廊下の窓から見えるのは教科書に載っているような純和風な庭だ。 二人で…無言で…歩く。 先輩は何を考えているのだろうか。