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SS-4-28『温泉に行こう』
「若葉は…俺が拾ってきた」
ジュッ…とアイスコーヒーを飲み切って僕は氷だけになったグラスを握り締めた。
人間って、拾ってこれましたっけ?
「先輩、犬や猫と違って人は拾えないんですよ?」
お?四人の視線が一斉に僕に向く。
「志摩、外国じゃ拾えるんだ」
「え!そうなんですか?…知らなかった…」
「くふふ…素直だね、志摩くん」
お父さんがふるふると震えてる…もしかしなくても笑われてる…。
「若葉は事情があって親と暮らしていない子供なんだけど…まーくんから離れなかったから貰っちゃったのよ」
「へ?」
貰われっ子?
今の時代に?
…腰に巻かれた腕に力が入った。
朝食を食べ終えてラウンジに移動してもなお若葉くんは僕から離れず、今は腰に巻きついている。
「若葉くん、君は先輩の事が気に入っちゃったの?」
僕の姿を映すその瞳に問い掛けた。
若葉くんは黙って僕を見ている。
「話さないだけで話している内容も、勉強も普通に…いや、それ以上に出来る」
「へ?」
「誰もまだ声を聞いた事がないんだよねぇ」
「若葉とお喋りしたいわ」
呑気に会話する夫婦だが、問題はそこなの?
「若葉は俺じゃなくて志摩がいいんだよな」
先輩はいつの間にか若葉くんの隣にすわってその光色の髪を優しく梳く。
愛しい者を見る眼差しで。
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