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SS-5-3『 今日と、明日と、あさってと』
あの時、ポスターが貼られたついたてが倒れて先輩を直撃した。
カーペットに足を取られて前に転ぶのようなものではなく、上から下に叩きつけられた。
床に倒れた先輩は頭から少し出血していたけれど眠っているかのように綺麗な顔をしていて、すぐに目を開けると思った。
けれど意識は戻らず病院に救急搬送され先輩は処置や検査を受けたのだ。
「志摩くん、家に帰って少し休んだ方がいい」
肩に優しく温かな感触。
「でも……」
眠っている先輩のバイタルは徐々に悪くなっている。
不安で側を離れられない。
「僕は、大丈夫なので…お父さんこそ…休んで下さい」
笑顔で話しているつもりでも、そう見えているだろうか。
先輩が倒れてから、心の中で僕はずっと泣いている。
叫び出したい位の不安、孤独、…先輩が死ぬのかもしれない恐怖。
……ずっと、泣き叫んでいた。
「しま…なかない…で…」
僕の手を握り、心配そうに見つめる青い瞳。
若葉くんは僕に向けて拙い言葉を紡ぐ。
…胸が苦しいんだ…
色は違えど先輩と同じ瞳で見つめられると…
弱っていく先輩と対照的に若葉くんは活動的になっている。
興味の範囲を広げ、お父さんやお母さんにも話しかける。
大きくなる不安。
…先輩と若葉くんの入れ替わり…?
…もしかしたら…
先輩は…もう…
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