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SS-5-2『 今日と、明日と、あさってと』
僕の生まれた家は裕福では無く、年端もいかぬ子供のうちに奉公に出された。
行った先の御屋敷の名前は…若狭の上…だったかな。
藩主は子が無く才能をもった親の無い子供達を引き取っていた。
その中に先輩も居て…先輩は他の子供達に比べて異質だった。
だって、目や髪の色が違う。
日本人らしい黒目、黒髪では無く、金髪で碧眼だったのだ。
他の血の繋がらない兄弟達も頭が良く、美形揃いだったが、先輩はその中で一番美しく、しかもとても優しかった。
僕は歳が近いこともあって凄く可愛がってもらったから周囲の妬みを買ってしまって、幾度となく陵辱され命までも奪われた。
残された先輩がどうしたのかは分からないが、前世の記憶を持ちながら死んでは生まれ、生まれては死んだようだ。
若葉はあの時の先輩にとても良く似ている。
生まれ変わりなのか…
…それとも…
…先に生まれてしまったのか…。
…そうだとしたら…先輩の命は…
…どうなってしまうのだろう…
揺り起こされて目を開けると若葉くんが心配そうに僕を見ていた。
「し…ま…」
「ん…」
…今…しまって…
「えぇ!若葉くん、喋れるの?」
「しま…しまぁ…」
若葉くんは僕の首に腕を巻き付けて泣き出した。
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