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SS-5-7『 今日と、明日と、あさってと』

「しま、はやく」 「待って、走らないで」 まだ二十代なのに、若い男の子の体力には到底及ばない。 「暑っつ…」 シャツの袖で滲む汗を拭い前を向くと、いつの間にか目の前に見慣れた顔が。 「しーまー!おそい!」 文句を言いつつもキラキラした瞳で僕の腕を取る。 「もう建物に入るから静かにね 」 こくんと頷く顔は神妙だ。 入口からエントランスを抜け、エレベーターに乗る。 五階で降りて白く長い廊下を歩いた先のドアを開けた。 「ユキさん、おはようございます」 ベッドの上で緩く上半身を起こして僕達を見ているユキさん。 「今日もあんまりいい天気だから外に出るなり若葉が走り出しちゃって、追いかけた僕だけ息が切れて苦しくて…」 僕はユキさんに話しかけながら身の回りのものを整理した。 「さあ、家に帰りましょうね」 「まー、帰ろう」 「…うん」 受付で挨拶して外に出る。 強い日差しがユキさんの白い肌を切り付けた。 「志摩…」 呼ばれて振り返れば足を止めたユキさん。 「俺…生きてる…」 「うん…ユキさんはちゃんと生きてる」 僕は、ユキさんの身体をを強く抱きしめた。 タクシーに乗って僕とユキさんの部屋に帰った。 今は若葉も一緒に住んでいるから実質は三人だ。 正直なところ、僕はもうダメだと思った。 若葉はユキさんの次の代だと確信していたから。 けれど一時不安定だったユキさんの容態は安定し、二週間の入院で退院する事になった。 以前より口数は減ったけれどその分若葉が喋るようになったから寂しくはない。 会社には家で生活して体力を戻してからの出勤になっているから暫くゆっくりと出来る事になっていた。

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