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第2話

境内へ続く階段を登るのが困難になった。 足が低い段差の階段に持ち上がらない。 なぜか上がってくる息。 「ヒロ?なんか様子おかしいよ」 「う、ん。でもわかんね」 そう答えて、葉山に支えられるようにして境内に上がった。 「う、わぁっ」 急に体が跳ね、意図せず反り返った。 そのまま崩れるように膝をつく。 体温が急に上がって、全身が痺れる。 一番温度が上がっているのは背中と左腕。 同じ体なのに、部分的に熱を持つなどあり得ない。 次に襲ってきたのは衝撃だった。 下腹部への痛みではない衝撃。 「な、なんだ、これ」 身体の異変についていけず、知らず目から涙が溢れた。 「ヒロ⁈どうしたんだよ」 葉山が覗き込んでいた。 その心配そうな顔を見つめて、熱を持つ左腕に触れると葉山の腕に触れた。 もう一つの熱を持つ背中にも葉山の手。 「ヒロ⁈」 青くなって覗き込んでくる葉山の吐息が頬に触れた。 「ひ、ああ」 とたんガクガクと体が震え、下肢に熱がこもり始めた。 (ま、まさか⁈発情⁈) 太腿の内側が痙攣するようにピクピクと動く。 ぞわりとする感覚が身体中のあちこちで起きていた。 『もうすぐ発情期に入るかもしれないから、薬はちゃんと飲みなさい』 最近口すっぱく母親に言われていた事を思い出した。 もちろん、飲んでいない。 出がけにも「飲んだの?」と聞かれ「飲んだ」と大嘘を吐いた。 早く葉山に会いたくて。 久しぶりだったから。 「ヒロ⁈なあ、どうしたんだよ」 そして気付いた。 先程から纏わり付くような甘い匂い。 αの体臭だ。 心配そうに覗き込んでいた葉山が急に黙り込んだ。 身体の震えを抑えようと自分を抱きしめながら葉山を振り返ると、苦しそうに顔を歪ませ、手が下肢を抑えていた。 ぞく、っと菅野の中心で泡立つような感覚が起こる。 そしてあり得ない場所で奇妙な違和感。 臀部の間で濡れた触感がする。 「ふ、あ」 菅野が出るままに出した声は自分のものとは思えない声。 菅野の声に葉山が呻き声を上げた。 それを涙で揺らぐ視界で捉えた菅野は、そっと葉山の頬に手を伸ばした。 「まさ、き」 菅野に呼ばれ葉山も顔を上げた。 汗が滲み苦しげに眉を寄せ、吐く息は荒く熱い。 ぞくぞくした。 悪寒ではないことはすぐにわかった。 「たすけ、て」 「で、でも、どうしたら」 「俺に、触って」 境内の隅に転がるように入り込んで、初めてキスをした。 とてもうまいとは言えなかったが、それでも十分興奮した。 菅野が触って欲しいところを言うと、葉山が撫でてくれる。 愛撫とは言い難い手つきだったが、菅野が感じるままに動かしていると葉山も興奮した。 キスをしながらお互いの中心に触れあい、擦り合う。 あっけなく達してしまって、お互いに手に付いたものを呆然と眺めた。 全然、静まらない。 荒い息を葉山もしていた。 菅野の喉がこくりと動いた。 葉山と触れ合った場所とは別のもっと奥がむず痒くて堪らなくなっていた。 「将樹」 「う、ん」 葉山の中心で濡れて光りながら、また隆々と立ち上がるそれに菅野は手を伸ばした。 「あっ」 葉山がびくっと背を震わせた。 「これ、俺ん中に挿れて?」 「え、で、もどうやって」 「大丈夫、入るから」 菅野には本能的にどうすればいいかよくわかっていた。 どうすればこの場が収まるのかも。 葉山の肩を掴んだまま後ろに倒れると、石に当たって痛みが走った。 けれどそんなのかまってられない。 ズボンから片足を引き抜いて、葉山の前で開いて見せた。 ごくっと葉山の喉がなると、羞恥とは別のものが菅野の体を赤く染めた。 葉山の手を導いて、入口を教える。 「ここ?」 「ん」 「はい、るの」 「ん、入る」 葉山は反り返るものを入口に添え、腰を押し込んだ。 「ああっ‼︎」 さすがに痛みが走った。 菅野が震え、涙を流すと葉山は腰を引こうとする。 「だ、めだ、そのまま、入って」 「でもヒロ、痛そうだし、入らない」 「ゆっくり…」 菅野が息を吐きながら緩めると、ちょっと葉山が入り込む。 それを繰り返して、やっと葉山が入ってしまうと菅野がふるふると震えた。 「ヒロ、大丈夫?」 「ん」 「中、熱い」 「ん、将樹も熱い」 葉山が菅野の髪を撫でると、ふっと菅野が笑った。 「ヒロん中、気持ちいい」 「ん、俺も。いいよ、動いて」 葉山の肩にきゅっとしがみつく。 「将樹が気持ちいいように、動いていいよ」 ふわりと見たこともないぐらいに菅野に綺麗な微笑みを見せられて、葉山は我を忘れて腰を動かした。 「ひ、あ、ああ」 本能のままに腰を動かしてくる葉山に揺さぶられ、背中も入口も中も全てが痛んだ。 それでも菅野の上で気持ち良さそうな顔で腰を振り続ける葉山に微笑みかけた。 知らず漏れる声は快感からくるものではなかったけれど。 「あ、あ」 「でる」 葉山はぶるっと震えると中で弾けた。 「ああ、あ」 身体の奥で熱いものがじんわりと広がった。 その感覚に菅野は身体を震わせた。 パタリと落ちてきた葉山の頭を撫でてやると、「気持ちよかった」と呟く。 やっと治ってくると服の泥を払って着込んだ。 菅野が服を着るのを葉山が手伝って、服の泥も払ってくれた。 ふとくすくす笑いだした菅野に葉山もつられるように笑った。 葉山に支えられて帰宅した家に誰もいなかったのは幸いだった。 見られたら、間違いなく何が起きたのかばれてしまう。 急いでシャワーを使って、泥だらけの身体を洗い、葉山が身体の中に残したものを流した。 ふと、思い出したような不安にかられたが、そのままシャワーのお湯とともに流れていった。 服を着込んでベッドに入る。 今度はちゃんと薬も飲んだ。 目を閉じて眠りにつこうとすると、思い出すのは葉山の顔ばかり。 時々口元が緩んで、誰も見ていないのに隠すように頬を揉んだ。 帰宅した母には境内で転んだとか、お菓子を葉山と一緒に食べ過ぎて食欲がないとか嘘を並べて自室にこもり、葉山が残した痛みに耐えた。 学校が休みに入っていたのも好都合だった。 いつも通り両親が出勤していくと、一人部屋のベッドの上で過ごす。 不意に鳴らされたドアフォンに内心苛立った。 けれどそれが葉山だったので、真逆の感情に変わった。 「ヒロ、具合どう?」 「もう平気」 その口振りから葉山が何も気付いていない、知らないことがわかった。 「上がれよ」 そう言いながら家の中に入れて、冷蔵庫から取り出したジュースのペットボトルを葉山に押し付けて二階の自室に向かう。

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