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第11話
その日、仕事は思ったより早く終わった。時計を見ると3時前だった。結局、会社に来たものの遥希の事が頭から離れず、あまり仕事に集中できなかった。
会社を出ると、ふと遥希のアパートの方に目を向けた。
(小竹がいないか様子見に行ってみるだけだって)
遥希に会いたい理由を無理矢理作り、自分に言い訳をしてみる。
手土産にと、目に入ったケーキ屋に入りケーキを購入した。
遥希のアパートが見え、辺りを見渡してみる。小竹らしい姿は今のところない。
インターフォンを押す指が一瞬躊躇うが、次の瞬間にはあっさり押していた。
バタバタと少し騒々しい音が聞こえ、勢い良く玄関が開いた。そこには焦ったような、驚いたような顔をしている遥希がいて、瑛士が逆に面食らってしまった。
「ど、どうしたんですか?」
「いや……仕事早く終わったから、何となく?暇してるかと思って」
顔が見たかったから、などとは言えない。
遥希は嬉しい態度を隠す事なく、屈託のない笑みを瑛士に向けている。
部屋に通されながら、
「ケーキ買ってきた」
「あ、ご馳走様です。コーヒー淹れますね」
少し浮かれているように見え、そんな遥希が可愛くて思わずほくそ笑んだ。
テーブルを見ると、ノートパソコンが開かれていた。
「あ、これ、気になってたパソコン」
「思い切ってボーナスで買っちゃいました」
遥希はキッチンでコーヒーメーカーをセットする手を休める事なく言った。
「俺も欲しいなー。あ、そうだ。明日おまえ暇?」
「はぁ、まぁ、特に何も」
テーブルにコーヒーと皿が置かれる。
「じゃあさ、明日パソコン買い付き合ってよ。俺、この辺の電気屋とかわかんないからさ」
「え?」
一瞬、戸惑うような表情を浮かべたが、
「俺で良かったら……」
顔を赤くしながらそう言った。
二人はケーキを平らげると、瑛士は一服すべくベランダに出た。タバコを吸わない遥希の部屋で吸うのはさすがに躊躇われた。
目の端に人影が見えた気がした。
(小竹か?マジかーキモいなー)
自分がされていなくてもぞっとするのに、された本人となれば恐怖だろう。
「今日も泊まっていいか?」
ベランダから中に入ると、キッチンで洗い物をしている遥希に尋ねた。
「え⁈」
さすがに遥希は目を丸くしている。
「だってどうせ明日も会うし」
「別にいいですけど……」
昨晩の事を思い出したのか、顔を赤くしている。
「でも、明日スーツで買い物行くんですか?」
「まぁ、それでもいいけど。それかTシャツか何か貸してよ」
その日の夜も、ビールを傾けながらテレビを見てたわいもない話しをする。
とても居心地の良い空間だと思った。
遥希は随分と自分に心を開いてくれたのか、ズケズケと言うようになり、それが瑛士には嬉しかった。
シャワーを浴びベットに入ると、瑛士は当然のようにキスを仕掛けた。今日も遥希は抵抗する事もなく、寧ろ瑛士を欲するように夢中で瑛士の舌を追った。互いにのものを抜き合い、眠りについた。
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