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第19話
今月末に遥希の誕生日があると知った。
遥希の誕生日の前日、瑛士はプレゼントを鞄にこっそり忍ばせ、いつものように遥希のアパートに足を運ぶ。
「お帰りなさい」
すっかりその言葉が定着してしまうほど、瑛士は遥希のアパートに入り浸っている。
「ただいま」
二人で住む話も浮上していた。1Kで男二人はさすがに狭く、瑛士の荷物がある為尚更だった。
遥希が作った夕飯を食べ、風呂に入り、時折体を重ねる。瑛士的に毎日遥希を抱きたいと思うが、遥希への体の負担を考えるとさすがに毎日は躊躇われ、極力週末だけで我慢していた。
あと、5分で12時だ。隣で遥希は衛星放送の映画に見入っている。壁の時計を見ると12時を指したタイミングで、
「天野、誕生日おめでとう」
そう言ってキスをした。
「あ、ありがとうございます」
映画に夢中で時間を忘れていたようだった。
「これ、プレゼント」
瑛士はバックからリングケースを取り出した。蓋を開けると、銀色に輝くシルバーのリング。
遥希はポカンとした顔をし、丸くした目でリングを見入っている。
「左手出して」
言われるまま遥希はおずおずと左手を差し出した。瑛士は薬指にそのシルバーリングを嵌め、
サイズが合った事に安堵する。
「こ、これって……」
「男同志だから結婚ってわけにはいかないけど、限りなくそれに近い」
遥希は感極まったのか、ポロポロと泣き出し瑛士に抱きついてきた。勢いで後ろに倒れ、瑛士は頭を床に打った。
「いた!」
馬乗り状態の遥希の目から涙が零れ、それがちょうど瑛士の口元に落ちたのをペロリと舐めた。遥希の顔が近付いてくると、啄むキスを繰り返し可愛らしく唇を甘噛みされる。
「凄く嬉しいです……ありがとうございます……」
瑛士は鞄からもう一つ小さな袋を出した。
「実は自分のもある」
袋から出したのはチェーンネックレスで、そこには遥希と同じ指輪が通っていた。
「さすがに同じのを俺が嵌めるわけにもいかないからな」
それを遥希に手渡すと、
「おまえが付けてくれ」
そう言って遥希に背を向けた。
遥希の手によって付けられたネックレスを瑛士は満足そうに見つめた。
不意に背中をに重みを感じ、遥希が自分の背中に抱きついたのだとわかった。その回された腕を掴むと、正面を向き遥希を真っ直ぐに見た。
幸せそうに綺麗に微笑む遥希を見て、心底幸せだと思った。そんな顔を自分が与えているのだと思うと、そんな自分も案外捨てたもんじゃないと思った。
「ずっと一緒だ、天野」
「はい……ずっと傍にいさせて下さい。俺……凄く幸せです」
「うん、俺も凄く幸せ」
そう言って互いの額を突き合わせ、見つめ合うと瑛士と遥希は深く口付けた。
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