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第6話 大学時代①

俺も桐ヶ崎も見事希望の大学進学を果たし、俺は経済学部、桐ヶ崎は心理学部となった。 学部が違えば、授業内容も違う。大学に入ったらいっぱい遊ぼうと言っていたけれど、俺は高校の時と同じように桐ヶ崎とも疎遠になるだろうなと予感していた。 でもいい意味で裏切られ、桐ヶ崎はマメに俺と連絡を取ったり、アパートが近いのもありお互いの部屋で飲んだり、勉強したり、遊んだりと月の1/3は会っていた。 夏の暑い日。汗を拭いながら、俺は食堂へと足を運んだ。冷房の効いた室内に入ると、すっと汗が引き寒いぐらいだ。12時近くの食堂はある程度賑わっており、俺はサバ定食を頼み、空いている席へ座り食べ始めた。 「えー!桐ヶ崎君エッチも上手いのー?」 真後ろから聞こえてきた声に俺はぴくりと反応した。 「あー!声大きいって!」 しーしー!と言っている声も同じぐらいの音量で、俺の後ろには数人の女が集まって話していた。 「ちょっと詳しく聞かせてよ!イケメンのエッチ聞きたい。」 「えー………、えっとね……」 勿体ぶっている女は今の桐ヶ崎の彼女だろう。桐ヶ崎はイケメンで、優しく、頼られる存在としてとてもモテる。多分彼女は途切れたことはない。しかし長続きはせず、大体3ヶ月周期で女が変わる。 エッチの事を昼間からこんな誰が聞いてるかわからないところで、話す低脳な女のどこがいいんだか、と心の中で悪態をつく。 「まずキスがすごく上手いの。私…キスだけで気持ち良くなっちゃって…。あと、触り方がね、すっごく優しくて、でも気持ちのいいところはしっかり責めてきて、もうヤバい。」 きゃーきゃーと周りを気にしない声に苛立ちながらも、俺はその声に集中する。 「アレもね…人より少し大きめだけど、丁度奥を突かれると、勝手に声が出ちゃうぐらい気持ちよくて。私初めて中でイっちゃった。」 えーヤバイヤバイ!とさらに声が大きくなる。俺は持っていた箸をガシャンと勢いよくお盆に置き、ガガッと椅子を引いてその場を立ち去る。 「やば…。聞かれてたかな…?」 後ろで声がしたが無視し、俺は半分以上残している定食を返却口へ返した。外に出ると、再び熱気が身体を包みこみ、我慢している苛々が更に強くなる。 話を聞きながら、先程の女を殴って口を聞けない状態にしたい衝動が込み上げてきた。 俺は薄々自分の性癖や好きな人を気づいていたが、桐ヶ崎が詳しく話したりしないので、こんな気持ちはただの思い過ごしだとやり過ごせていた。でもさっきの彼女の口から聞くだけで、俺の中のメーターは振り切れ、嫉妬や妬みが溢れてくる。 いつ好きになったのかはわからない。 初めて勉強を聞かれた時だろうか。笑顔を見た時だろうか。一緒にいるのが楽だと言ってくれたときだろうか。 きっかけがあるんじゃないかと探したが、特に特別好きだと感じた日はなかった。彼女との性行為を聞いたのが、恋を自覚するきっかけだなんて悲しすぎる。何も報われない。 一度自覚をすると、壊れた蛇口のように止めどなく愛しい感情が溢れ出てくる。彼女がいなかったことがないモテ男に、気持ちを伝えるなんてことは絶出来ない。言っても絶対成就しないし、今の関係が終わるだけだ。 でも桐ヶ崎が彼女と一緒にいる場面や話を聞いてしまったら、多分俺は口から気持ちがこぼれ落ちてしまう。 それから俺は少しずつ桐ヶ崎と距離を置くように、会う約束をキャンセルしたり、意識的にいそうな場所には向かわないようにしていった。

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