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第5話 高校時代④

桐ヶ崎はバスケ部に所属していたが、市予選を2回戦敗退で締めくくり、受験まで勉強に集中するようになった。 さらに一緒にいる時間が増え、勉強の合間にそれぞれ自分の事をぽつりぽつりと話すようになる。 桐ヶ崎の休日の過ごし方、好きな音楽、服、スポーツ、食べ物。嫌いな食べ物、虫、匂い…。ただの人気者の1人として捉えていたものが、桐ヶ崎健斗として認識していく。 「俺、結構相談されるんだけど、相談にのる前と後で顔が全然違うときがあるんだよね。すっごくスッキリした顔で感謝された時に、そういうの仕事に出来たらいいなって思ってるんだ。」 桐ヶ崎の将来の夢は心理士や社会福祉士などの相談業務を行う仕事をしたいと明確な目標があり、行きたい大学も心理学で有名な先生のことろで学びたいと決まっていた。 「こんな真面目な話あんまりみんなとしないから照れるね。」 少し頬を赤らめながら言う桐ヶ崎。何も考えずにただ闇雲に勉強している俺とは全然違い、眩しく感じた。 「…すごいな。桐ヶ崎ならいい相談員になれるよ。」 みんなの心を掴める事ができる桐ヶ崎なら、きっとみんな話したくなる。素直にそのまま口に出すと、さらに桐ヶ崎の顔が朱を帯びた。 「茶化さず真面目に返すところがもうね…。」 「あ、気分を害したか?」 「ううん。嬉しいよ。」 「そうか、ならよかった。」 流石に将来を見据えて大学を決めないといけないなと思うが、特に夢もなく、日々をこなしていた俺は桐ヶ崎から行きたい大学は?と聞かれ、思わず桐ヶ崎が目指している大学を口に出す。 「えっ?一緒の大学目指してんの?」 「………ん、まぁ…。」 「早く言ってよ!嬉しいじゃん。大学一緒なら、遊びたい時遊べるし、勉強したいとき一緒にできるし。受験まで一緒に頑張って、終わったらパーっと遊ぼう!」 「……うん。」 目を三日月型にして黒目が見えないぐらいに笑った顔を見て、俺は口からポロリと出てしまった大学名を言ってよかったなと思った。それからは、もっと精力的に、勉強に集中していき、センター試験に臨んだ。

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