4 / 22

第4話 高校時代③

俺の学校は3年になると、進学別にクラス分けをされた。 人気者は美容の専門学校に行くと言っていたので、俺は特に将来は見据えてなかったが、絶対一緒のクラスにはならない国立大学を目指すことにした。 元々成績は学年50番以内だった俺は、晴れて進学クラスになった。人気者とは離れることは出来たが、そのグループだった奴が同じクラスになり、時々俺に絡んできたりするので、俺は高2の時と同じようにどのグループにも属せず、根無し草だった。でもみんな受験や残り少ない部活動に精を出しており、そんな俺を気に留めていないのは楽だった。 俺は時間を持て余し、勉強するようになった。受験の時期は勉強していても何も言われない。よい暇つぶしになっていた。 「栗原君。これわかる?」 勉強をしていると、久しぶりに学校で名前を呼ばれた。顔を上げると、先日前の席になった、うちの学年のもう1人の人気者、桐ヶ崎健斗だった。 すっと出されたノートには、先週授業でやっていた内容で俺は簡単に説明をした。 「あ、なるほど。俺、ここ間違ってたのか。」 「形似てるからそっちの公式使いたくなるけど、こことここが違うから気をつけたら大丈夫だと思う。」 「なるほど……。栗原君説明わかりやすいね。ありがとう。」 人好きのしそうな顔で微笑まれ、男の俺でもドキッと胸が高鳴る。 「…またあったら聞いてよ。」 もう一方の人気者とは離れたくてたまらなかったのに、こっちの人気者とは何か接点を持ちたいと思った。 「うん。よろしくね。俺英語まあまあいけるから、何かあったら聞いてね。」 それからは席が前後という事もあり、ぽつりぽつりと桐ヶ崎と話す回数が多くなり、一緒に勉強することが増えていった。人気者である桐ヶ崎は高身長、爽やかな顔立ちで、人に壁を感じさせずにするっと懐に入り込むことができる高いコミュニケーション能力があり、周りにはいつも人がいた。さらに、進学クラスというだけあって学年30番以内と頭も良い。そんな凄い奴なので、何で俺なんかと勉強するのか、ふと気になり聞いてみると「1番集中できて、空気が楽だから。」と答えた。 そんな風に言われたのは初めてで、俺は嬉しさを悟られまいと仏頂面で「そうなんだ。」と答えた。

ともだちにシェアしよう!