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第2話 高校時代①
健斗と出会ったのは高校時代までさかのぼる。
高1の春。中学生から高校になったことで世界が変わる出来事が起こるかもしれない、なんて思いながら入学式を迎えた。
でもそんな事は実際に起きることなく、中学校で仲が良かった数少ない友達と同じクラスになり、休み時間はたわいのない話をして楽しく過ごした。俺のグループはいじられる程は目立たず、いてもいなくても支障がないような目立たないグループで、特に波風立つ事なく平穏に過ごしていた。
高2になり、俺に転機が訪れる。
仲の良かった2人の友達とクラスが離れ、俺は名前は知っているけれど仲良くはない人と全く知らない人しかいないクラスになってしまった。
クラス替えは学校側も考慮して考えてくれていると思っていたが、全く考慮してくれず、クラス分けを見たときは呆然と立ち尽くした。
そんな俺を見ていた仲の良い友人2人が、休み時間になったら話せるし、元気だせって!と励ましてくれる。そうだ、話したいと思えばすぐに会える。不安はなかなか消えなかったけれど、何とかなるだろと思い、高2の生活をスタートさせた。
2年の俺のクラスはすでに仲がいい人が決まっており、グループが出来ていた。大人しそうなグループには入れてもらえたが、お互いに会話のテンポがうまく噛み合わないこともしばしばあり、必要な時に輪に入れてもらっているような感じだった。
クラスにいづらく、俺は暇があれば他クラスの友人の元へ遊びに行っては1年の時と同じように色んな話をして盛り上がった。
しかし、クラスが違えば時間割りも違う。体育、情報、音楽、家庭科…教室以外で行う教科は思いの外多く、移動教室の時などは殆ど話すことは出来ずに終わってしまう。昼休みの時間を持て余して、俺はよく机に突っ伏して寝たフリをしていた。
新学期から約3ヶ月が経った時、いつものように友人のクラスで話していると、近くにいたバッチリメイクをしている女のグループ4人が話しているのが聞こえた。
「またメガネきてるよ。」
「クラスに友達いないんじゃない?」
「ははっ、カワイソ〜。」
「こっち来すぎて顔覚えたわ〜。」
女の方を見ると、バッチリと目が合いケタケタと笑われる。
「やばっ、目合っちゃった!」
「えー。聞こえてたんじゃない?雅美声でかいからさー。」
「麗奈も大きいじゃんー!」
「あっ!見て見て!廊下!桐ヶ崎君通った!」
「わー!やばっ!今日も変わらずカッコいいー!」
あっという間に俺に興味をなくし、俺の背後を通っていく男に女たちは集中して話題はその男に変わった。
俺にも聞こえていたということは、一緒に話していた友人にもさっきの会話は聞こえていた。
「気にすんな」と声をかけられたけれども、その後も何とも言えない気まずい雰囲気を感じ、俺はいつもより早めに自分のクラスに戻っていった。
それから時々女のグループから、からかわれるように「また来てる」とひっそり笑われるようになった。気まずくなり、あまり友人のクラスに足を運ばなくなると、今度は友人が俺のクラスに顔を見せてくれるようになった。周りから何か言われる事がなくなり安心していたのも束の間、今度は俺のクラスの人気者の男が俺に目をつけた。
「あいつ、いつも教室で寝てんのに、友達いたんだ?」
「ああ、確か隣のクラスじゃない?」
「へー。何で急に来出したんだろ。」
「あ、あれじゃない?僕、寂しいウサギちゃんなんです〜。」
「ぎゃははっ、きめぇ真似してんじゃねぇよ!」
「意味わかんねぇー」
自分はその会話には入っていないのに、自分の話題を勝手気ままに話され、盛り上がっているのを耳にすると嫌な気分でいっぱいになった。
俺のクラスでも友人のクラスでも話していると思い出したように時々からかわれ、友人と話す時も、周りが気になり楽しく話せなくなっていた。友人もそれを感じていたようで、お互いに少しずつ距離ができてしまっていた。
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