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第12話 夢の中

うっすら目を開けると、薄暗い室内だった。眼鏡をかけていないので、全体がぼんやりとしている。どこだろう。自分の部屋ではない。 「ん………あっ」 なんだか下が気持ちいい。声が漏れると、その声に反応するように下の方から人が現れる。 「お酒のせいかな…。勃たないけど、気持ちいい?」 ぼんやりと人がいるのはわかるが、薄暗いのもあって誰だかわからない。 ぐちゅぐちゅと粘着音が聞こえた。前立腺を擦られているのだろう。音と共に背筋をビリビリと駆け上がってくるような快感にたまらない気持ちになる。 「あっ、ああ…っ、気持ちい……」 「本当?良かった。」 ゆっくりと顔が近づいてきたかと思うとキスをされた。ちゅ、ちゅっと啄ばむキスからねっとりとした舌を絡めるキスに変化する。粘膜同士がぴちゃぴちゃと触れ合うのが気持ちいい。下からも上からも快楽で満たされているが、性急さはなく、俺の快感をじっくりと引き出すような触り方に安心して身体を預ける。 キスが終わり目を開けると、相手の顔が見えた。 「…………桐ヶ崎。」 「…うん。どうしたの栗原?」 優しい顔で微笑まれ、またキスを落とされる。ぼーっとした頭で都合のいい夢だなと思った。 今までもよく桐ヶ崎が出てくる夢は見ていた。一緒に笑ったり、なんでかドラゴンと戦ったり、今みたいにセックスしたり。 セックスの夢もほわほわと曖昧なことが多かったが、今日は何だかリアルだ。桐ヶ崎がいつもつけている香水の匂いまでする。 目の前に桐ヶ崎がいるけれども、これは俺の頭の中の妄想だ。現実じゃない。 「好き…。」 現実では言えない言葉を夢の中で告げる。言えずに奥底へ眠っていた言葉を口に出すと、源泉を掘り当てたかのように言葉が溢れてくる。 「桐ヶ崎好き。ずっと好きだった。お前が高校の時話しかけてくれて。大学で起業するきっかけもくれて…。桐ヶ崎と出会えたから今の俺がある。」 離れようとする身体を引き止め、ぎゅっと抱きつきながら俺からキスをする。 「好き…。好きだ…。」 ああ。言葉にすると、すっと身体が楽になる。ずっと溜めて、溜めすぎた気持ちはもう俺の身体にはいっぱいだったのだろう。限界が来る前に、こうやって夢で吐き出したら、現実の俺はまだまだ我慢できる。 「……栗原。」 「困った顔すんなよ。もっとキスして。俺をお前でいっぱいにして。」 指で弄られていた蕾がヒクヒクと動くのを感じる。早く俺を満たしてほしい。 俺は足をMの形にして、蕾がよく見えるように両手で広げる。 「…早く。キスもいっぱいしてほしい。」 「…栗原っ!」 「んああっ!」 ずんっと中に入る衝撃があり、下腹部が押し上げられる。何か異物が入ったようで、痛みと違和感が足の間から感じる。 「はっ…あぅ…んん、っ」 足の間をゆっくりと抜き差しされ、桐ヶ崎の腰も動いているのを見て、心が満たされていく。桐ヶ崎の怒張している熱いものが中でドクドクと脈打っているのを直に感じる。 「栗原もっと動いていい…?」 いつもと違う切羽詰まった物言いにゾクゾクと全身に電気が走り、頭が痺れる。 「動いて。俺で気持ちよくなって。」 そう言うと、桐ヶ崎はガタが外れたように激しく腰を動かした。眉間に皺を寄せ、短い息を吐きながら俺にキスをする。触れ合っている肌はお互いに汗でじんわり湿っている。 「あっ、は、好きっ、桐ヶ崎好き…っ」 桐ヶ崎を全身で感じながら、俺は溢れ出る気持ちを心いくまで吐き出した。

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