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第13話 次の日①
ガンガンと頭の内側から鈍痛がする。胃がもやもやとして気持ち悪い。目を開けると、日の光が差し込んで明るい室内だった。知らない部屋だ。
「どこだここ…。」
「あ、起きた?」
すぐ近くで声が聞こえ、声のする方を向くと桐ヶ崎っぽいシルエットと声がする。
「桐ヶ崎か…?」
目を細めながら言うと、「そういや、眼鏡してなかったな。」と言って俺に眼鏡を渡してくれた。
「ああ、さんきゅ。」
眼鏡をかけると視界がクリアになる。目の前の人物はやっぱり桐ヶ崎だった。
「身体大丈夫?」
「いや…、完全に二日酔いだ。気持ち悪い……。」
「朝ご飯作ってるけど、食べれそう?味噌汁と卵焼きとご飯。」
「…食う。」
何か腹に入れた方が気分は良くなる。食べるために起き上がろうとし、身体を動かすと尻からも鈍痛が走った。
「ってぇ…。」
何だ?座っただけでもじくじくと痛みが襲う。痔か?痔持ちじゃなかった筈だが。酔ってるときに尻を強打でもしたんだろうか?
「やっぱり痛む?ごめん。がっつき過ぎちゃって。」
「え?」
ふっと顔が近づいてきたかと思うと、唇に柔らかいものが触れる。
「栗原が可愛いこといっぱい言うから、我慢出来なかったんだよ。」
すぐ味噌汁温めるね、と離れていく桐ヶ崎の後ろ姿を俺は唖然と見つめる。
「……どういうことだ?」
ガンガンと痛む頭で必死に考える。昨日は飲み会で……、桐ヶ崎に彼氏がいたことにイライラして、酒めっちゃ飲んで……、そうだ。タクシー呼んでもらった。それからは…………家に帰ったのか?…桐ヶ崎の家にいるってことは帰る前に酔い潰れたんだろう。じゃあ何でさっきナチュラルにキスされたんだ?可愛いことを言った?何のことだ……。
「できたよー。」
「ん、ああ……。」
布団から出ようとして、俺は何一つ身につけていない事に気づき、慌てて布団に戻る。
え、ちょっと待って……。
何で全裸?俺、桐ヶ崎の家で全裸になってんの?意味わかんねぇ。
「どうしたの?」
「……い、いや。服が……。」
「あ、汚れたから今洗濯干してるよ。ちょっと待って。俺の服持ってくる。」
「ああ…ありがと。」
何で汚れてんだ?……あ。ゲロでも吐いたのかもしれない。ふと、夢の映像がフラッシュバックする。
……夢が現実なら、桐ヶ崎の意味不明の行動が繋がるが……。いやいやいや、ないないない。あるわけない。
「お待たせ。下着も新品だから。」
「ああ、助かる。」
下着の入ってる袋をばりっと開け、脚を通そうとするが、体勢を変えたことで、尻の痛みがツーンと突き刺さる。
「ぐあっ」
痛みに悶えていると、「結構痛い?俺手伝うよ。」と桐ヶ崎が下着を俺の手から取り上げ、俺を寝かせると布団をがばっとめくり下着を脚に通す。
「えっ、え、え、」
憐れもない俺の全裸が剥き出しになる。俺は顔が赤くなっているのが自分でもわかるぐらい熱くなる。それに気づいた桐ヶ崎が微笑む。
「可愛い。」
砂糖菓子みたいにデロデロに甘い顔で内太腿をさらりと撫でられ、俺は夢が本当は現実だったんだと理解した。
「〜〜〜〜っ!」
あんなに恥ずかしいことを俺は本人に言って、あんな行動もして……っ!
頭も痛いし、尻も痛いし、気持ち悪いし、恥ずかしいし、ぐちゃぐちゃの気持ちについていけず、俺はとりあえず下着を履かせようとしている目の前の男を両足で思いっきり蹴飛ばした。
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