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そして現在に至る(3)

 この一瞬のうちに起きたいろんな出来事に、頭が追いつかない。順を追って考えよう。まず、あれは本当に椚田だったのか。当たり前だ。ちょっと混乱して頭がおかしくなってるみたいだ。あの容姿にあの声は椚田でしかない。  次、アヤと呼んだ相手は、あの気難しそうな男で正解なのか?呼ばれたことに対して反応していなかったが……  そして。  あの二人はどういう関係なのか。  恋人に会うために有給を取り、遠距離恋愛の相手を大阪まで呼びつけて、駅へ迎えに来て、最初こそ何か揉めてはいたものの、仲睦まじく歩いていった……  ということは  彼女=アヤちゃん=男?  それもあんな可愛げとは無縁の神経質そうな男?  ……わけがわからない。  智はいったん考えるのをやめ、新幹線の中では仮眠を貪ることにした。が、眠れるわけもなく。  考えてもわからないのに考えてしまう。椚田はゲイなのか?男性と付き合っているということなのか?それなら自分にだって可能性が……  ないな。  同性愛者だからって男なら誰でもいいわけじゃない。そんなこと百も承知だ。それに、あの無邪気であどけない、ひだまりのような笑顔は、きっとあの相手にしか見せない、仮に智が付き合えたとしても智には見せてくれない顔なのだろうな、と思う。  もう完全に、どこからどう見ても、諦めるしかなくなった恋。誰の目にも触れることなく、咲き誇ることなく手折られる花のように、ひっそりと幕を下ろす時が来たのだ。 「……っ」  隣に誰もいないのをいいことに、智は車窓に顔を向けて少しだけ泣いた。  翌週には普通に顔を合わせることになる。普通に、顔を合わせることが出来るのだろうか?この想いが叶わないなら視界に入ってきて欲しくない、なんて思考も一瞬頭を掠めたが、じきそうではないと思い直した。  叶わないから諦めなきゃいけないなんて、誰が決めた?今まで通り、何も変わらない。それでいい。多くを望むから、苦しくなるのだから。  一緒に仕事が出来て、たまに仕事以外の話をして、姿を目で追えたら、それで。

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