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【試し読み】身の丈合わない男の話 2
「長いなあ、お前の拗らせ片思い」
椚田が去るのと入れ替わりに智に声をかけてきたのは同期の加藤。智の椚田への思いを知るただ一人の男。打ち明けた訳ではなく勝手にバレてしまったのだが。
「相変わらずぼーっと見蕩れて。身体ばっかりでっかくて肝っ玉のちっちゃい奴やで」
「うるさいなあ」
小心者の智、皮肉なことに身長だけは一八六センチと無駄に高い。小さい頃からずっと同年代の中であたまひとつ飛び出ていたが、内面は今と変わらず内向的であったため、木偶の坊だのウドの大木だのと罵られることも少なくなかった。そのくせ背が高いからと言う理由で、力仕事を押しつけられたり、バスケットボールやバレーボールではセンターやミドルブロッカーに配置され、勝手に期待されては期待外れの結果となることが多かった。智は力も運動神経もごく人並みだというのに。
逆に、本人にそんな気は無いのに見下されていると思われたり生意気だと言われたりすることもあり、智は長身であることがコンプレックスだった。文字通り『身の丈に合わない』のである。
「ところでな、俺結婚するから、式来てな」
「えっ?! 嘘」
寝耳に水。毎日毎日昼食を共にしているのに、結婚のケの字どころか、加藤が誰かと交際していることすら智は気づかなかった。
「あ、相手は……?」
「岩崎」
智はもう驚きすぎて声が出ない。岩崎は智や加藤の同期で、そこそこ親しい。さらに過去、バレンタインデーに椚田へ告白して振られているのだ。情報量とツッコミどころがありすぎて、智の脳内許容量を超えていた。
「どうして椚田さんを好きになった岩崎さんがお前なんか」
「やかましいわ。まああれよ、いつまでもうじうじと引きずってんのはお前だけってこと」
「……」
ぐうの音も出ない。同じ思い人から振られ、智が一方的に仲間意識を抱いていた岩崎は、さっさと次の恋に進み、さらに家庭を築こうとしている。着々と前進していたのだ。
「スピーチも頼むで!」
「えぇ……」
人前で話すのが苦手な智はとっても嫌そうな顔をした。
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