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第4話

   マツバの手は後ろ手に回され、梓の服についていた装飾用のリボンで親指同士を結ばれてしまった。つまり、梓と同じポーズになった。  違うのは、背後にいる人物だ。  梓の後ろには、黒い着物のアザミ。   そしてマツバの後ろには……あでやかな小花文様の袖を揺らした、アオキの姿があった。   「そう。そうして自由を奪ってしまえば、あとはおまえが思うままに攻めればいいんだよ」 「お、オレが、紅鳶さまを……」  アオキの目が、欲望の色を映して揺らいだ。  紅鳶、という男をマツバは知らないけれど、元一番手のアオキが惚れたぐらいだ。相当にいい男なのだろう。  しかし、マツバだって西園寺に飽きられないための秘儀を伝授してほしい。  アオキばかりずるいではないか。 「こ、これをほどいて、僕にもさせてくださいっ」  ごそごそと身を捩りながら、マツバはそう声をあげた。  するとアザミの柳眉が、面白そうに上げられる。 「どうする、アオキ。紅鳶も、きっと黙って縛られてはいないよ。いまのマツバみたいにほどけと言ってくる。おまえは、紅鳶を黙らせるんだい?」  アザミの言葉に、アオキの杏仁型の瞳が思案するように瞬いた。  惑う視線が、マツバの上をゆっくりと流れる。 「お、オレは……」  アオキの体が動いた。   マツバの背後から、前へと回る。そして、体の自由の効かないマツバを、絨毯の上に押し倒した。 「わっ」  マツバが可愛らしい悲鳴を上げて、仰向けに倒れた。下敷きになった腕に体重が乗らないよう、すぐに上体を起こそうとする。  その着物の(あわせ)を、ぐいと割り開く手があった。  アオキが……マツバの太ももの裾を左右にはだけさせようとしてきているのだ。 「ちょ、ちょっと、アオキさんっ。待って、待ってくださいっ」  マツバの制止の声はアオキの耳を素通りする。 「オレは、紅鳶さまのここに奉仕をして……」 「フェラなんか、普段からしてるんだろう?」  アザミがアオキの言葉をせせら笑った。 「せっかく縛ったんだから、普段触らないようなところを触ればいいじゃないか。たとえば、乳首とか」 「べ、紅鳶さまの乳首をですかっ?」 「ふふ……。おまえだって感じる場所だろう? 頑張って(いじ)れば、紅鳶も感じるようになるよ。ほら、見てごらん。この梓も……」 「ああっ」  アザミの指がおもむろに、梓の服の中に忍び込み、くにくにと乳首をつまんできた。  思わず嬌声を上げた梓は、体を捩ってその手から逃げようとする。  それを許さず、アザミはつまんだ乳首を引っ張った。 「ひゃっ、あっ、ああっ」 「開発されれば、こんなにも感じる場所なんだよ、乳首は。やってみてごらんよ」   アザミが促すと、マツバの下半身に伸びかけていたアオキの手が、おずおずと上の方に上がってきた。 「う、嘘でしょうっ? ちょ、ま、待ってっ、待ってくださいっ」  マツバが悪漢に襲われるヒロインのように頬を引きつらせる。  こういうとき、和服は無防備だ。  帯をほどいてしまえば前はたちまち開いてしまい、触ってくださいといわんばかりに肌が露わになる。  襦袢ごと襟ぐりを割り開かれて、マツバの色づいた乳首が露わになった。  アオキの形のきれいな指が、その飾りに伸ばされ……つん、とそこを突いてくる。  ビクっとマツバの肩が跳ねた。  なんとかアオキの手から逃げようと、背後にじりじりと下がったマツバの背が、アザミの座るソファにぶつかる。  これ以上は下がれない。  追い詰められたマツバの乳首を、アオキが、先ほどよりも大胆な動きで弄ってきた。

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