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第20話
翌日俺は学校を休んだ。
2人のせいで疲労困憊になったからだ。
特に三浦に酷使された身体が痛いし、ツライ。
まだ違和感のあるお尻は、まるでまだ三浦が中に入っている様な感覚だ。
アイツマジでヤリ過ぎ。
青葉といい三浦といい、アイツ等の性欲はどうなってんだよ。
付き合わされる身にもなれバカ。
力の入らない身体をベッドに沈ませゆっくり身体を休めた。
1日中ダラダラしたお陰か、翌朝はスッキリしていたので学校に行く事にした。
制服に着替え、玄関を出ると
「おはようございます」
笑顔の青葉が居た。
「おう、おはよう」
びっくりした。何で居るんだよ。
「昨日先輩お休みだったから寂しかったんですよ。今日は制服着てたので登校すると思って迎えに来ちゃいました」
うん、何故俺が制服着たの分かった。
「あっ、鞄持ちますよ。行きましょ?」
左手に2人分の鞄を持ち、右手で俺の手を繋ぐ。
ちょっ、何勝手に繋いでんだよ。
振り解こうとしたが
「今日はいっぱい先輩に逢いに来ますね」
ニコニコ微笑まれ
「勝手にしろよ」
毒気を抜かれた。
手を繋いだまま電車にも乗った為周囲の視線がずっと纏わり付いた。
何の罰ゲームだ。
ガタイの良い男がずっと離さず手を繋いでたら注目の的なんだよ。
なんかきゃあきゃあ嬉しそうな声聞こえるし、パシャパシャ写真撮ってる女の子も居る。
何この羞恥。
駅を通過する度増える乗客。
狭苦しくなり掛ける直前に抱き寄せられた身体。
「大丈夫ですか?」
耳元で優しく囁かれたが、全然大丈夫じゃない。
さっきより余計注目されてんよ。
恥ずかしくて死にそうだったが、ナデナデ優しく髪を撫でられ
「………………時雨のバ…カ……」
全てどうでも良くなった俺は甘える様青葉に身を委ねた。
改札口を出ると凛茉が居る。
見られたら絶対怒られると分かっていた俺は駅のホームに着くなり
「時雨、手放して?」
青葉にお願いした。
「良いんですか?放して」
「…………っ」
「嫌じゃないでしょ?俺と繋ぐの」
嫌じゃない。
けど、見られたらダメなんだ。
「嫌じゃない。けど、俺凛茉のだから。凛茉の許可なしに凛茉以外と手繋いじゃダメなんだ。だから、時雨」
「うん。良い子だねかずちゃん。でも名前で呼ぶのは許せない、かな?」
え?
背後から聞こえた可愛らしい声。
どうして?まだ改札口出てない。
「嫌な予感してホーム迄来ちゃった。僕昔っから当たるんだよねこういうの」
凛茉は俺に近付くと
「ね、放そうか」
命令した。
キュッ、強く握られたが
「……ごめん」
無理矢理振り解いた。
すぐさま腕に抱き付いた凛茉は
「ねぇ青葉くん。前にも言ったよね?かずちゃんは僕のなの。許可なく近寄らないで」
青葉を睨んだ。
「なら、許可下さい。先輩に近付いて良い許可」
「はぁ?バカなの?許すワケないでしょ?友達になりたいだけなら許すけど、青葉くんは違うでしょ?青葉くんはかずちゃんが好きなんだから」
「ええ、好きです。俺は千紗を愛してます」
トクンッ、胸が鳴る。
優しい眼差しで見られ、心が喜んだ。
「青葉くんがかずちゃんを抱いたのは知ってるよ。そのせいでかずちゃんが前だけじゃいけなくなったのも」
「へぇ、バレたんですか。意外ですね、白水先輩そういうの鈍感だと思ってました」
「バカにしてんの?青葉くん」
あぅ、ヤバイ。
なんか険悪な雰囲気なってきたぞ。
「知ったのなら話が早いですね。白水先輩千紗と別れて下さい。先輩はもう貴方じゃ満足出来ない。俺だけですよ?千紗を愛せるのは」
向けられる熱い視線。
「好きです千紗。ずっと側にいます。誰よりも愛しているんです。だから……俺を選んで?」
差し伸べられる手。
無意識に伸びてしまう手。
触れ合う直前、フフッ凛茉が笑った。
「何言ってんの?青葉くん。満足出来てるよ。昨日沢山出して貰ったしね?中に」
「…………え?」
「昨日ね、みうちゃんと」
「ダメッ!!言わないで。お願い、凛茉。言わ……ないで…」
「千紗?」
嫌だ、聞かれたら嫌われる。
昨日の俺はどうかしてたんだ。
気持ち良過ぎて頭バカになっちゃって、沢山2人を求めた。
聞かれたくない。
「ごめんねかずちゃん。でも言うよ?」
「ヤダ!時雨、聞いちゃダメッ!!!」
ポロポロ涙が零れる。
泣きだした俺の頭を撫でると凛茉は
「昨日みうちゃんと僕2人でかずちゃんを抱いたの」
言って欲しくない事を口にした。
「それってまさか三浦先輩が千紗を抱いたって事ですか?」
「そうだよ。かずちゃん可愛かったぁ。スッゴイ沢山喘いで。あんなにエッチで可愛いかずちゃん初めて見た。あっ、因みに僕はネコだから抱いてないよ、かずちゃんの事」
……………………っ。
聞かれた。
知られてしまった。
怖い。嫌だ、嫌われるのが怖い。
ヤダ、時雨に嫌われたくない。
「………………時雨……」
恐る恐る名前を呼ぶと
「何それ。泣きそうです。聞きたくなかった。千紗が三浦先輩に抱かれたなんて」
「時雨、ごめん」
慌てて青葉に近寄る。
「時雨」
名前を呼ぶと
「触らないで下さい」
パチンッ、手を振り払われた。
え?
今、何された?
「俺に抱かれてすぐ三浦先輩に抱かれるなんて、最低です。見損ないました。もう……顔も見たくありません」
「……時雨?」
「名前も呼ばないで下さい。安心して下さい白水先輩。もうこの人には二度と近付きませんから」
「うん。分かって貰えて嬉しいよ青葉くん。じゃ、もう顔見せないでね?」
「はい」
嘘。何これ?
「時雨。時雨待って」
側を離れる青葉に手を伸ばす。
嫌だ、行かないで?
「時雨っ!!」
呼ぶのに聞こえてないみたいに去っていく青葉。
嫌!!
行って欲しくなくて腕を掴んだら
「放して下さい。貴方みたいな淫乱初めて見ました。汚い手で触らないでくれませんか?」
パシリッ、まるでゴミでも叩くかの如く叩かれた。
「………………時雨?」
向けられる嫌悪と侮蔑の眼差し。
吐き捨てられる冷たい声。
これは誰?
知らない。
こんな青葉知らない。
だって青葉はいつも優しくて誰よりも俺に温かくて。好きだって、愛してるって言ってくれた。
ずっと側に居るって。
「さよなら先輩」
全面的に悪いのは俺だって分かってる。
でも嫌だ。
放さないって、言ってくれたじゃないか。
嫌だよ、時雨。
「行くよ、かずちゃん」
凛茉に引き摺られて無理矢理離される距離。
「時雨、時雨ぇっ!!」
何度も名前を呼んだのに、青葉は一度も振り向かなかった。
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