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青葉時雨の焦燥 2

店頭で買った家具だけでなく通販で頼んでいた特注のも届き、漸く一通り全ての家具が揃った。 これで完全に千紗を入居させれる状態になった。 さぁ、どうやって此処に住まそうか。 今千紗は三浦先輩の家に居る。 鉄壁のガードが強過ぎて1人の時は全く近付けない。 2人の時に一緒に住みませんか、聞いても三浦先輩に阻止されるのが目に見えて分かる。 一体どうしたものか。 これじゃ八方塞がりではないか。 もうこうなったら仕方ない。 やるしかないか。 困り果てた俺は強行突破に出る事にした。 此処の大学では5月に防災訓練がある。 その日に行動を移そう。 防災訓練の日。 俺は事前に依頼していた人達にお願いします、頭を下げた。 最初に校庭に集まるのだが、集合も兼ねて火災訓練をする。 サイレンと共に各自様々な場所から校庭へ口に手やハンカチを当てながら移動する。 その時を利用する。 2人が移動の為廊下に出た瞬間にわざと沢山の人達を走らせた。 そして前々から三浦先輩を狙っていた女性に三浦先輩に話し掛けさせる。 人混みに紛れてワケが分からなくなっている間に俺は千紗を連れ去る。 笑ってしまいそうになる位簡単に計画は実行され成功した。 無理矢理腕を引っ張り大学を出る。 「壮嗣…何処?ヤダ、嫌だ。壮嗣、壮嗣っ」 三浦先輩が見えなくなった瞬間、千紗は狂った様に泣き出した。 「嫌だ。壮嗣何処に居るの?側に居てよ。壮嗣ぅ……っ、ゃぁ…」 ヒックヒック泣きじゃくる千紗に胸が締め付けられた。 「千紗」 名前を呼ぶのに 「………あき…つぐ…………」 千紗には聞こえない。 「千紗っ」 少し大きな声を出し、両肩を掴みながら名前を呼ぶ。 「…時雨?」 漸く合わさった視線。 何故此処に居るの? 何故隣りに居るのが三浦先輩じゃなく俺なんだ? そう視線が訴えていた。 一度止めた足を再び動かし歩き出す。 「何処……行くんだ?なぁ、大学に戻ろ?」 「戻りません」 「時雨?」 戻りたがる千紗の意思を無視しグイグイ引っ張りながら歩く。 「着きましたよ」 「……え?」 あっという間に着いた家。 「入って下さい」 俺は千紗を家に招き入れた。 「此処…何処?」 不思議そうに部屋を見渡す千紗。 「俺の家ですよ。実家から遠いから引っ越したんです。大学にも駅にも近いから色々と便利でしょ?」 「そう…だな。良い場所だ」 嗚呼、良かった。 気に入ってくれたんだね。 此処は2人の家なんだから千紗が気に入らなければ意味がない。 この家は千紗が居て完璧になるんだ。 居ないと不完全だ。 「ねぇ、千紗。ゆっくりじっくり家中見てごらん?」 言われて遠慮がちに歩き回り見学する千紗。 凄いな、趣味良い、これ絶対高いヤツだろ? 聞こえる声。 凄く楽しそうだ。 「気に入りましたか?」 勿論気に入るだろう。 全て千紗の好きそうな物で揃えたのだから。 「うん」 思った通り千紗は微笑んだ。 「喉乾いたでしょ?」 テーブルに置いたグラスに 「ありがとう」 千紗が口を付ける。 嗚呼、俺が入れたお茶を千紗が飲んでいる。 いつも俺が飲んでいるのと同じのが千紗の中に流れ込んでいる。 唯それだけの事なのに、凄く感動した。 「家離れて大丈夫だったのか?」 「ええ。決められた大学に進学出来たからか反対されませんでした」 「そっか。良かったな」 「はい」 話していくうちに 「………っ、あれ?」 違和感を感じ始めたのだろう。 「ねぇ、なんか暑くない?俺汗出てきた」 つぅーっ。眉の横を伝う一筋の汗。 「おかしいな。何だろ?身体…熱い………」 千紗は座り込んだ。 先程のお茶にコッソリ入れていた媚薬。 それは速効性ではないが、かなり強烈で一度効き出すと思考も理性も壊し、快楽しか求められなくなってしまう。 「何…コレ?やっ、嘘?身体……おかしい」 ハァハァ乱れだした呼吸。 赤く染まっていく頬。 潤む瞳。 恐らく身体も色々反応し始めているに違いない。 「大丈夫ですか?」 自分が服用させたクセに白々しく尋ねる。 肩に触れるとビクンッ!面白い位跳ねた。 「……っ、悪い。今触らないで?俺……今…おかしい…から」 そう言われて触らない人間なんて居ない。 「でも凄く辛そうですよ。ベッドに運びますね?」 いかにも心配している優しい仮面を被り、身体に触れる。 「ひぁっ、やっ、ダメ。お願…い。触っちゃ……ダ…メ……」 相当媚薬が苦しいのだろう。 必死に全身に力を入れて耐えているのが見て分かる。 あ~あぁ。我慢しなくて良いのに。 拒絶の言葉を無視し抱き上げると、寝室に連れて行った。 ふわりベッドに優しく降ろす。 嗚呼、やはり此処は千紗が居なきゃ成り立たない空間だ。 今迄の俺1人だけの時には感じれなかった充実感。 此処に千紗が居る。 やっとこれで家が完成した。 俺と千紗2人だけの家。 ずっと此処に呼びたかったんだ。 そして今、千紗は此処に居る。 嗚呼、やっとだ。 もう三浦先輩には返さない。 離さないよ?千紗。 「ごめ…ん。ちょっとの間……ひと…りにしてくれない…か?」 息を乱しながら必死に声を紡ぐ千紗。 1人で処理するつもりなのか俺を部屋から追い出そうとしている。 バカだな。そんな勿体無い事させるワケないだろ? 千紗がするの見たい。 「ねぇ、勃ってますよ千紗。どうしてですか?」 「……やっ、見ないで!俺…今おかしいんだ」 なんて白々しいんだ自分。 媚薬のせいだって分かっておきながらソレを教えず、突然苦しみだした千紗に本当に心配そうに接する。 「ソレ俺が口で飲んであげましょうか?それとも自分でしますか?」 「…え?」 「二択ですよ。選んで下さい」 「ちょっ、待って?無理。どっちも…ヤダ」 俺の出した提案に慌てて首を左右に振る。 「ならずっとそのままです。千紗が頼む迄俺は触りませんし、この部屋からも出て行きません。自慰もしないのなら苦しいでしょうね?」 「…ひぁっ!?」 ツン、軽く指先で勃ち上がった物を服越しに触る。 「どうしますか?我慢出来ますか?」 先程より明らかに乱れる呼吸と流れ落ちる汗。 相当苦しいのだろう。 握り締めた手から血が滲み出ていた。 「……自分…で……する」 これ以上は我慢出来ないと諦めたのだろう。 千紗はゆっくり服に手を掛けた。

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