3 / 96
一章
「あ…っと、その…すいません……」
口に出してしまった手前、今さら謝っても仕方ないとも思いながら頭を下げた。
「ああ…いや、いいよ。俺のせいなのは、本当だからね…」
その場を取り繕い、着いたエレベーターに足を踏み込んだ……その上司を、 いきなり壁際に追い詰めた。
「な…なにするんだ!?」
さっきよりも驚きに目を見張り声を上げる彼に、「……何が、俺のせいだ」 低く言って、上目に睨んだ。
「え…ど、どうしたんだ? 各務く…」
「……うるさい、黙れ…」
喋る上司の口を片手で押さえて、襟元から覗く肩に噛みつく勢いで口づけた。
「…ん、あ…何っ…する……」
「……黙っていろと言ったはずだ」
止められない欲望のまま、締めているネクタイに手をかけてほどこうとすると、 「…よ、よせ…!」 と、手が振り払われた。
ともだちにシェアしよう!