10 / 96

二章

ーー翌日、どんな顔で対応するのかと思っていたら、以前と変わらずごく当たり前のように課長は接してきた。 意識もしてない素振りで、普通を演じようとするのに段々に腹が立ってくるのを感じた。 そっちがその気なら……と思う。 昼休憩の際に、空き会議室の前で待ち伏せて、通りすがった課長を中へ引きずり込んだ。 「各務っ……!」 「……呼び捨てとは、感心しませんね?」 室内の鍵を締め、襟首を片手で捕まえた。 「…う、ぐっ…」 「俺を、甘く見ないでもらえますか。このままなかったことにできるとでも、思っていたんですか?」 手で首をやんわりと締め上げつつ詰問をすると、 「……そういう…わけじゃない……」 と、苦しげに口を開いた。 「……だったら、どういうわけですかね?」 手を離すと、彼は首を押さえてむせ返った。 「うっ…げほ、俺も、他にバレたくないだけだ……」 「……ほーぅ」 一旦は頷いたふりで、彼の髪を鷲掴んだ。

ともだちにシェアしよう!