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二章

ーー仕事終わりにホテルへ向かうと、そこには課長が既に待っていた。 ロビーのソファーに座り込んでいる彼に近づいて、 「……よくいらしてくださいましたね」 隣に腰を下ろした。 唇を引き結んで俺を見るのに、 「部屋をとってありますんで、行きましょうか」 促すと、相変わらず無言のままで立ち上がった。 乗り込んだエレベーターに他の客がいないのを見計らって、 「……そうつれなくしなくても、いいじゃないですか」 耳のそばへ口を寄せた。 「……おまえは、俺を好きだと言ったが……」 不意に口を開いて、そう言うと、 「俺は……おまえが、嫌いだ」 また口をつぐんだ。 「……嫌い、ね」 目を逸らす上司の顔を覗く。 「……いいんですよ。別に嫌いでも、今はね」 エレベーターが開き、腰を抱えて廊下を歩き出す。 「嫌いでいてもらった方が、後から好きにもなってもらえるので」 着いた部屋のドアを開け、手をあてがっていた背をドンと押し出した。

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