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五章

「や…だ…取って…くれ…」 一旦スイッチを切って、 「いいえ」と、もう一度首を振る。 「拒否権などありませんので」 告げて、嵌っている手錠を外した。 「こっちは取ってあげますよ。でもこれで帰れないですよね?」 自身では抜けないよう奥へ挿入して、 「起きて、服を着てもらえますか。それとも、一緒にシャワーでも浴びますか?」 訊くと、のそのそと鈍い動きで起き上がり、 「シャワーは一人でする…」 答えてベッドを立って行った。 浴室から水音が響き、シャワーを浴びる彼の姿を妄想すると、居ても立ってもいられなくなった。 突き動かされるままバスルームへ向かい、頭からシャワーをかぶる裸体に背中から抱きついた。 振り向きざまに口づけて、舌を捻じ込む。 「…ん…っ」 ぬらぬらと石鹸水の流れる肌を手で撫で回しながら、奥へ舌を絡ませていく。 抗う頬を掴んで、飽きるまで口づけて唇を離すと、 流れ落ちるシャワーに紛れて、彼は涙を零した……。

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