56 / 96
五章
「や…だ…取って…くれ…」
一旦スイッチを切って、
「いいえ」と、もう一度首を振る。
「拒否権などありませんので」
告げて、嵌っている手錠を外した。
「こっちは取ってあげますよ。でもこれで帰れないですよね?」
自身では抜けないよう奥へ挿入して、
「起きて、服を着てもらえますか。それとも、一緒にシャワーでも浴びますか?」
訊くと、のそのそと鈍い動きで起き上がり、
「シャワーは一人でする…」
答えてベッドを立って行った。
浴室から水音が響き、シャワーを浴びる彼の姿を妄想すると、居ても立ってもいられなくなった。
突き動かされるままバスルームへ向かい、頭からシャワーをかぶる裸体に背中から抱きついた。
振り向きざまに口づけて、舌を捻じ込む。
「…ん…っ」
ぬらぬらと石鹸水の流れる肌を手で撫で回しながら、奥へ舌を絡ませていく。
抗う頬を掴んで、飽きるまで口づけて唇を離すと、
流れ落ちるシャワーに紛れて、彼は涙を零した……。
ともだちにシェアしよう!