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五章

シャワーを上がって、突っ立ったままでいる彼の身体をバスタオルで拭いてやり、 「服も、着せてあげましょうか?」 シャツを肩に着せかけると、 「自分でやる…」 と、奪い取られた。 着込むのを横目に見ながら、自分も着替えて、 「ランチでも行きますか?」 と、手を引いた。 背後にはバイブが仕込まれているせいで逃げられるはずもなく、のろのろとした足取りでついてくるのを見て、 持ってきたリモコンをポケットで密かに握り締めた……。 ……近くのカフェで、サンドイッチとコーヒーを頼んだ。 オーダーが運ばれてきても、彼は手を付けず、ぼんやりとただ座り込んでいた。 「食べないと、体力が持ちませんよ?」 そう促して、 「夜まであなたを帰す気はないので」 付け加えた。

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