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五章
ーーカフェを出て、広めの公園に寄った。
疲れ切ったようにベンチに腰を落とす彼の横に、距離を詰めて座った。
はぁ…とため息をつくのに、ベンチに置かれた手の上から自分の手を重ね合わせた。
意外にも振りほどかれない手の間へ指を挿し込んで、ギュッと握り締めると、
「…あっ…」
たった今気づいたらしく、必死に離そうとした。
「仲良く手を繋いだって、いいじゃないですか」
嘲笑混じりに言い、繋ぎ目に口づけようとして、
「……おまえと、仲良くする気なんてない…」
と、拒まれた。
「ふん…まぁいいですけどね。俺と仲良くしておいた方が、痛い目も見なくて済むんじゃないですか?」
握った手を引き剥がして、
「……痛い目だろうと、好きにすればいい……」
そう投げやり気味に口にした。
「では、好きにさせてもらいますね」
と、強く手を引くと、
バランスを失い胸に倒れ込んできた。
顎を持ち上げて、唇を重ねると、
「よせ…外で……」
と、押し返された。
「好きにしていいのなら、キスぐらいさせてくださいよ?」
頬を挟み再び口づけて、舌を潜り込ませようとするのに、
「……外では、やめろ…」
顔が背けられる。
「どこだろうと、したい時にさせてもらいます」
「こんなことしてる奴、いない……」
言って、周囲を見回すように彼が目を泳がせるが、人手の多い日曜の午後に誰も俺たちになど注目していなかった。
「……ほら、誰も見てもいない」
と、ガラ空きになっている彼の股間に手をやった。
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