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五章
ーーホテルを出ると、もう日が暮れかけていた。
歩き出しながら、
「寒くなると、暗くなるのも早いですよね」
話しかけると、
「ああ…」と、気のない返事をして、
それから「……もう、帰してくれ」と、呟いた。
「そんなに、帰りたいですか?」
「ああ…」とまた、生返事が戻る。
「帰る前に、そこの公園でもう一度休んで行きませんか?」
昼間に訪れた公園に寄り、街灯の下のベンチに座った。
昼には親子連れなどであれほど賑わっていた公園の中は、日が暮れると人もまばらで静まり返っていた。
騒いでいた子供らの代わりに、カップルたちの姿が増えて、暗がりのベンチでベタベタとじゃれ合っていた。
ふと見ると、目の前のベンチにも恋人どうしがいて、キスを交わしているのが目に入った。
気づいたらしい彼が無言で目を逸らして、
「恥ずかしいんですか?」
訊くと、
「別に……」
と、顔をうつむけた。
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