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六章
場がお開きになって、二次会へ行く者や帰宅する者などに分かれて散って行く中ーー
「皐月課長も二次会どうですか?」
男性社員の一人が、酔ってあまり意識もなさそうな課長に尋ねた。
「うーん……」
ゆらゆらと左右に揺れながら佇んで、返答に迷っている彼の腕をぐいと引いて、
「課長は、酔っ払ってるようなんで、俺が送っていきますんで」
代わりに答えると、
「あ、そうですか。各務さん、確か今日は車で来てるとかって……だったら任せちゃってもいいですかね」
と、その男を含んだ二次会へ流れるメンバーは、繁華街の喧騒に呑まれていった。
飲み会の店の前には会社の連中は誰もいなくなって、改めて酔っている彼の腕を自分の肩へ抱え上げた。
「飲み過ぎだろうが…」
ふらふらとよろめいて真っ直ぐにも歩けない身体を、引きずるようにもして停めてある車へ連れて行った。
駐車場に着き助手席に押し込むようにも乗せて、ハンドルを握った。
しばらく走らせていると、ふっと横で目を覚まして、
「……あ、ここは?」
と、車内を見回して、
「…か、各務……」
気づいた俺に驚いた顔を見せた。
「……なんで、おまえが、」
と、言葉を呑むのに、
「酔っていたんで、送ろうかと……」
言うと、
「……それだけか……」
と、疑うような眼差しが向けられた。
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