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七章

「……俺は、それでも……」 何かに取り憑かれたようにも彼が口にして、じりじりと刃を自分へ向けさせる。 突き当たった先端が触れ、じわりと肌を血が滲むと、 「……それでもおまえが、欲し……いっ!」 叫んだその悲鳴に近い声に、弾かれるようにして、 握らされたナイフの切っ先で、血の滲み出した皮膚を、 「……俺に、こうされたいのかっ!」 ギッと斜め上へ一文字に切り裂いた。 「……んっ…くぅ…ふ…!」 痛みに声を上げ、血にまみれて背中から頽《くずお》れそうになるのを、 腕に抱き留めて、必死で抱えた。 もう、離せなかった……。 鼻をつく血の匂いに突き動かされるように、 抱いて滲む血を一心に舐め取って、身体中を這いまわるように手で撫でさすり、 紅い血を靡り付けながら、欲望のまま舌を絡め、我をも忘れて唇を貪った。

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