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完結編:②

「じゃあ、先上がります」 「おう! お疲れ~!」  はぁっと息を吐きながら帰り支度をしていると、フロア担当の同僚が駆け寄ってきた。 「なぁなぁ新田!! さっき帰ってった客がさ、お前の上がり時間聞いてったぜ」 「はぁ?」  ニヤニヤと笑う同僚に怪訝な顔を向けると、更にその顔をニヤけさせて肘で突いてくる。 「ちょっとボーイッシュな、すげぇ可愛い子だったぜ! 彼氏連れかと思いきや、お前のこと聞いてくんだもん、驚いちまった!」 「なんだよそれ…ンで、まさかお前教えてねぇだろうな」 「バッカだねぇ~! 教えねぇ訳ねぇだろ?」 「はぁ!?」  暫く「バカか」「アホか」の言い合いになったが、結局同僚から「幸せになれよ!」の声援を受けて店を出る羽目になった。 「お疲れ様です」  少々浮かない気分で裏口から外に出ると、予想通りだが予想外の人物、秋山に声をかけられた。 「あ、そっか」 「え?」 「いや、何でもない」  俺の呟きを大して気に留めていない秋山に、コンビニ寄ってから帰りましょう、と促され一歩足を踏み出したところで、今度こそ別の声が俺にかけられた。 「あっ、あの!」  その声に俺が振り向くのと、秋山が振り向くのは同時だった。 「あの…」  振り向いた先で、もじもじと手をすり合わせる女性……いや、これでも彼は、歴とした男性だ。だってそれは、大凡一年ほど前。  俺が秋山に寝取られた、恋人なのだから。 「拓巳…?」 「惣くんっ!!」  俺の隣で、秋山がキャップを深く被り直したのが見えた。

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