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龍司は左耳に装着しているピアスに片方の手を伸ばし、小さなねじをキュッと閉めた。
ふわふわとピアスから漂っていた甘い香りが、次第に薄れていく。
「湊専用に作った催眠効果のパフュームを、こんな所で使う羽目になるとはな」
小さな寝息をたて、龍司の体に支えられている湊を両手で抱き上げる。
リビングを通り過ぎ、真っ暗な寝室のドアを開ければゆっくりとベッドの上に湊を寝かせた。
「俺だけの湊…。俺と初めて会った事も…あの時の事もいずれ思い出す。…だが、あの時の事はお前にとって死にたいと思ってしまう程苦しくて辛い記憶だ。俺は“また”お前を失いたくはない…。だからお前の記憶を消した。そして――。」
目にかかった長めの前髪をかき分ければ、湊が小さく声を漏らした。
もぞもぞと寝返りをうつ湊に小さく笑みを浮かべると、柔らかい唇を指でなぞる。
「愛している。湊」
小さく開いた唇に顔を近づけると唇を押し当てた。
「ん…」
柔らかくて甘い唇を優しく吸い上げると、少しだけ開いた口の中に舌をいれる。
「っふぁ…っん」
「みなとっ…」
湊の舌に自分の舌を絡め、啄めば甘い唾液が溢れ出てきた。
「っんふ…んっんん…」
龍司は湊を組み敷くように上から覆いかぶさり、唇を堪能しながら細くて白い小さな指に自分の指を絡める。
なんでお前はこんなにも甘い?
言葉も、声も、息遣いも、唇も…
どうしてお前が俺に向ける全てがこんなにも甘いんだ…ッ
「湊…」
名残惜しそうに唇を離すと、2人の混じり合った糸が線を引く。
つぅ――と伸びた糸は龍司が離れるとプツリと切れて湊の唇を伝い落ちる。
「湊…少し、出かけてくる」
唇を伝う糸に手を伸ばすと指で優しくすくい、その指に舌を這わせる。
甘い2人の混ざり合った糸の味に、龍司は自然と口角が上がってしまう。
綺麗に畳まれてあった足元の掛布団をかけると、龍司は湊の唇に触れるだけのキスをし部屋を出て行った。
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