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「どういう事だ」 高級一等地の中心にそびえ立つ、VIP向け会員制ホテルの最上階スイートルームのベッドの上で受け取った電話の内容に、龍司は自分でも驚くほどの低い声が出た。 深夜3時半。 まだ起きる時間には早すぎる時間帯にかかってきた電話の内容は、衝撃的なものだった。 『申し訳、ありません…ッ。どうしても一目だけ、一目だけ会いたくなってしまい…』 「それで…電話をしたが、声を聞いたら更に会いたくなるからとすぐに電話を切り、メールを送ったと…?」 ベッドの枕もとにある電気をつけると立ち上がり、少しだけ離れたソファの背もたれにかけてあるシャツを手に取ると、龍司は着替えながら電話の相手へ静かに言葉を返す。 『…はい…ッ』 「お前は相当俺に殺されたいらしいな。何故、俺をそんなに怒らせる?湊も百合亜姉さんも誰のせいで苦しんだと思っているんだ?」 『…っ』 龍司はジャケットを羽織ると、ベッドの中でうずくまってる小さな少年を一瞥し、財布から適当にお札数枚を取り出すと、ベッドの上に投げ捨てるように置いた。 「お前の様なゴミがこの世にいていいと思っているのか?自分の妻を“人形”にして、その息子まで手にかけようとしたお前が。」 『ッ…!それはッ…!』 「俺に口答えをするのか?お前の様なゴミでも、認めたくはないが戸籍上は湊の父親だ。”俺が開発した例の薬”で消したはずの記憶が戻ったあと、お前は湊が成人するまででいいから生きて償わせてくれ。その後は殺してくれても構わないからと必死に懇願してきたお前を、未だ記憶が消えたままの湊のためにと、情けだけで使ってやっているんだ。――だが、湊の前から立ち去る事を命じた時に約束したはずだぞ?”湊には一生会わない事が条件”だと。それが例えメールという間接的な手段でも、だ。もしその約束を一度でも破れば、直ぐにお前を拘束し、殺すと…。俺はお前がやってきた事は絶対に許さないし、これからも許す事はない。――本当はすぐにでも殺したいくらいなんだ」 感情を必死に抑えているのだろうか、受話器の向こう側から押し殺すような息遣いが聞こえる。 「お前はこれまで、俺との約束を守り、俺の元で必死に償う姿勢を見せ、仕事も従順にこなしてきた。だが…勘違いはするな?俺はお前を一切信用していないし、あの時のお前への憎しみが消えたわけじゃない。むしろ百合亜姉さんを殺しておいて、平然と生きているお前を見る度に憎しみは増すばかりだ。…それでも約束があるから今はまだ生かしてやっているんだ。生かしてもらっているという事を忘れるな。生かしてもらっているというだけで有難く思え。…お前を殺すその時が来るまで使ってやっているんだ。――その俺の行為を、お前は今回の事で全部無駄にした。自ら言った約束を、お前は自ら破ったんだ」 感情なく話す龍司の声に男は息を呑む。 「朋也、お前は地下牢行きだ」 『ッ!ちょ、ちょっと待ってくれ!龍司くん!俺の話をッ…!!』 「貴様…誰に向かって口をきいている。お前の様なゴミが俺の名前を呼ぶな!!今からA01とZ2を向かわせる。A01には湊を俺の所に連れてきてもらう。Z2はお前も知っている通り、地下牢の管理をして貰っている奴だ。…――俺が何を言おうとしているか分かるな?」 龍司は酷く動揺を見せる男の言葉遮ると、怒りの含んだ声で言い放った。

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