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「ごめんなっ、湊…」 朋也の手に力が入る。 涙を必死で堪え、大きくなった湊を抱きしめた。 「俺、母さんが死んでからずっといい子にしてきた!父さんを困らせないようにして頑張ってきたのに、いきなり父さんがいなくなったからッ…!!悲しくて、苦しくて、寂しくてっ!なんでいい子にしてたのに捨てられたんだろうって…っ死んだ方がマシだって何度も思ったんだよ!?」 「…っ。」 「…でも、もしかしたらいつか父さんが帰ってくるかもしれないって思って…!母さんがいなくなって、俺までいなくなったら父さんが悲しくなるから…!」 溢れてくる涙を手の甲で拭うと、真っ直ぐに朋也の顔を見あげ、微笑んだ。 「“笑顔を忘れなければ必ずいいことがあるし、幸せになれる“」 父さん覚えてる? 父さんが俺に言った魔法の言葉。この言葉は小さい時も今も、俺の大好きな魔法の言葉だよ。 「みな、と…っ」 朋也の目から涙が伝い落ちた。 留まることを知らずに朋也の瞳から流れる涙に、今度は湊が抱きしめ返す。 昔よりも成長したからか、朋也の体が昔よりも大きく感じることはなかった。そして、それと同時に流れた月日の長さを感じる。 「父さんの馬鹿ッ…」 ねぇ父さん。 俺から父さんに望むものって、何か知ってる? ―――少し、視界が掠れた気がした。 もう父さんは頑張らなくてもいいんだよ? 俺はもう大丈夫なんだ。 だから父さん。 ―――次第に視界が揺らいでくる。 そして、空間がぐにゃりと曲がった気がした。 「ずっと俺だけの優しい父さんでいて」 途端、全身の力が抜けて湊の意識は途切れた。

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