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「…ふう。ようやく落ち着いたかな?湊」 飲ませた薬が少し効きすぎたかな?と腕の中に倒れ込むように意識を失った我が子を優しく朋也は抱きしめた。 遠い記憶の中で抱きしめた時よりも成長した湊に優しく微笑みかけると、顔にかかった髪の毛を優しくかきわける。 それでも自分の体よりは小さい湊の体は、細くて華奢だった。 髪から除く長い睫毛と、色素の薄い髪色は母親と瓜二つで何とも可愛らしい。 朋也は、湊の体を支えている腕からなんとも言えない熱が広がってくる感じがして慌てて首を横に振った。 「っ…だめ、だ…。湊は…俺の大事な子供なんだ…。また、あの感情に囚われたらっ…」 ―…エイエンニ、シタイ 湊から感じる体温が、吸い取られる様に朋也の腕を伝って入ってくる。 ダメだと頭で分かっているのに、自然と手が首元に伸びてしまう。 片手でも十分に掴めるほどの小さな首は、すっぽりと朋也の手の中に納まった。 白い肌は宝石のようで、なんとも美しい。 肌から湊の脈拍が伝わってきて、自分の意思ではないのに手に力が入ってしまう。 美しい服と綺麗な顔に映えるメイク。 そして、真紅の様な赤がどれだけ似合うのだろうかと、朋也は虚ろな目を湊に向けた。 「みな、と…。やっぱり我慢なんて出来ない。お前は百合亜の生き写しだ…。今度こそ…今度こそ成功させて見せる…」 ダメだと思っていても、本能で勝手に手が動いていた。 朋也はもう片方の手でスラックスのポケットに手を伸ばすと、中から透明な液体が入ってる手のひらサイズの注射器を取り出す。 「湊…お前は、俺の永遠の人形になってくれるよな…?」 静かに注射器を腕へと移動させる。 湊は変わらず起きるそぶりはなく、微かな呼吸だけが聞こえてくる。 「百合亜の時は失敗をしてしまった…。もう少しだったのに、邪魔が入ってしまったから…。俺のたった一人、心から愛した大切な大切な美しい女性だったのに。これは愛しているから故ゆえなんだ…湊、お前なら分かってくれるよな?…愛してるからこそ俺は―――…」 湊の白い肌にゆっくりと針を当てると、中の液体を指で押し込もうと力を入れた。 「そうはさせねーぞ!」 後ろから聞こえてきた低い声と同時に、朋也の手の中にあった注射器ごと腕を掴まれ、捻るように曲げられると、注射器の針が自分の首へとあてがわれていた。 そして同時に、後頭部に当てられたひんやりとした堅い感触に、手の力を緩めざるを得なかった。 小さな音を立てて、注射器がむき出しのコンクリート床へと転がり落ちる。 朋也は徐々に我にかえると、諦めたように目を閉じた。 この2人じゃ勝ち目は微塵みじんもないと感じたからだ。 振り向かなくても、誰が来たかはすぐに分かった。 「…ゼロと…アキか…」 体を押さえつける人物と、後ろで銃口を押し付ける人物の名前を絞り出すような声で呟いた。

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