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名前を呼ぶと同時に、押さえつけられていた手の力が強まる。 「…今、その名前で呼ぶんじゃねぇ。T01、社長のご命令だ。――お前を地下牢に連れていく。」 朋也を押さえつける男は長身で、真っ赤な長髪の髪を後ろで綺麗に結わえていた。 訓練で鍛えたのだろうか筋肉がついたがっちりとした体格と、うっすらと香る生臭い血の匂いが特徴の男は、地下牢の管理を任されている龍司が信頼をおく配下の1人。 コードネーム・Z2ことゼロだ。 「T01、お前のした事は許される事ではない…。社長をこんな形で侮辱し裏切るなどッ…!身の程を知れッ!!社長がどのようなお気持ちでお前の様な人間をお使いになられていたのか分かるのかッ…!!」 後頭部に突き付けられていた銃口が、怒りと連動するようにカタカタと動く。 今すぐに発砲しそうなほど怒りを露わにするのは、コードネーム・A01ことアキ。 2人は、龍司に忠誠を誓う配下だった。 胸元まで延ばされた栗色の艶やかな髪は片方だけ耳に掛けられていて、色気さえ感じてしまう程の美貌。 女性の様に細くすらりとしている体系ではあるが、その肉体には程よく筋肉が付けられている。 頭の回転も速く、戦闘能力の高さもある。まさしく龍司の秘書兼右腕と呼ばれるにふさわしい男だ。 「…分かっているよ。自分が社長に対しどれだけの裏切りをしたかなんて。…でも俺は…ッ!…俺だって、湊に会いたいって思う感情だけはどうしても抑えきれなかった!湊は百合亜と俺の、大事な息子なんだ!親が子供と会いたいと思うのは当たり前だろう!?」 ゼロに押さえられたまま、朋也が叫んだ。 「T01…。お前、何自分が善人みたいな言い方してるんだよ。お前がそんな事を言える立場だと思ってんのか?」 ゼロの腕の力が強まり、腕を首元に寄せ締めあげる。「ぐっ…!」とくぐもった朋也の声が聞こえ、苦しさで言葉を発する事が出来なくなってしまった。 「忘れたとは言わせねぇぞ?お前がした事は、自分の妻を監禁して長期の催眠状態にさせ、感情も全てコントロールし、自分だけの人形にするとかいう卑劣な行為だ!!普通の人間だったら理解不能の殺人行為をしたんだ!!お前は変態趣味のドールマニアの殺人鬼だろーが!!自分の妻にそんな異常な事をさせておいて、よくそんな善人ぶった言葉を言うことができるなァ!!アァッ?!」 「うっ、ぐっ…!」 ゼロは怒鳴り付けながら、絞め殺しそうな勢いで手に力を入れる。 朋也は力ない手でゼロの腕へ手を添えた。 助けを志願するように押さえられた手を見るや否や、ゼロは力を緩めると素早い動きで腰に付けられていた鎖で繋がった手錠を朋也にはめる。 「はぁッ…はぁッ…はぁ…ッ!」 朋也の腕に付けられた真っ黒く頑丈な造りの手錠は、じゃらじゃらと金属音を立てて朋也をしっかりと繋ぎとめた。 ふらつき、膝をついたまま深呼吸を繰り返す朋也の目の前に、すらりとした足が見えて、ゆっくりと視線を上げる。

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