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「龍司様、大丈夫でございますか?」
運転席から心配そうにかけられた驫木の優しい声に、龍司は窓の外を見ながら返事をする。
「…だいじょうぶだ。」
代々久堂の専属ドライバーを続ける驫木をちらりと見て、声を絞り出す。
バッグミラー越しに心配そうに眉尻を下げた驫木は、全て悟っているかのように静かに口を開いた。
「龍司様、私は龍司様の味方です。ずっと…それはこれから何があろうとも変わりはありません。命に代えてそう誓います。」
「…驫木…っ」
窓を見ていた龍司の視線が、運転席の驫木へと向けられた。
「――龍司様。百合亜様のご自宅に到着いたしました」
龍司の言葉を遮るように、驫木がにこりと微笑んだ。
車のエンジンが止まり、運転席から降りてきた驫木が後部座席の扉を開け、降りるように促 す。
「いってらっしゃいませ、龍司様」
「驫木…。…ありがとう」
「とんでもございません。なにかありましたらご連絡いただければすぐに参りますゆえ、直ぐに仰って下さいませ」
優しく微笑みながら、深くお辞儀をする驫木に、龍司は小さく笑みを浮かべた。
驫木と話すと、心が穏やかになっていく気がして、話していてとても安心する。
再び視線を建物に移した龍司が、目の前の戸建ての玄関へと歩き出す。
月嶋財閥の跡取りなのだとしたら、久堂の家の様な豪邸なのだろうと当たり前の様に考えていたせいか、家を見て驚いた。
高級住宅街地の最奥の場所に建てられた家は、周りに比べると少しだけ大きいが、外観も一般的な家とはさほど変わらない造りをしていた。
コロニアル調の屋根と、白をメインにした外壁にワンポイントで入った赤は何ともお洒落だ。
門扉は赤色でデザイン性もあり、門扉の間から中を覗き見れば、庭一面に植えられた薔薇の花が龍司を出迎えてくれた。
龍司は門扉脇のレンガ壁に取り付けられたカメラ付インターフォンを押す。
インターフォンからの返事はないまま、すぐに玄関の扉が開いた。
「やぁ龍司くん!いらっしゃい!百合亜から話は聞いているよ!」
小走りで門扉 に近づいてきた朋也はにこりと微笑み、鍵を開けると中に招き入れてくれた。
「…ご迷惑をかけると思いますが、よろしくおねがいします。」
「そんな事ないよ!百合亜の可愛い弟だもん。さぁ、入って入って!」
誰かも確認しないで出てくるなんて、カメラ付きインターフォンの役目がまるでないなと心の中で毒づきながら、龍司は笑顔を張り付けた。
表情のコントロールはもう慣れている。
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